研究課題/領域番号 |
18K14790
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
八木 光晴 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 准教授 (90605734)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 底魚 / 東シナ海 / マイクロプラスチック / FT-IR / 潮目 / 胃内容物 |
研究実績の概要 |
当該年度の研究成果は、主に大型練習船を活用した野外調査の結果に基づく2点が挙げられる。1つ目は、九州西岸域のマイクロプラスチックの量とサイズ分布の季節変化を明らかにした点である。これは、2019年4、6、7、10、11月に長崎半島から五島列島東岸に至る五島灘の9定点においてニューストンネットを用いて実施した。曳網は対水速力2ノットで10分間水平曳きで行った。採集した試料は研究室内で30%過酸化水素水で有機物を処理した後、実体顕微鏡下で個数、形状、色を記録して写真撮影した。その後、フーリエ変換赤外分光光度計に供してポリマーの種類を判別した。その結果、各月の海水1トンあたりの浮遊個数mean (S.D.)は、4月は0.34(0.19)、6月は0.27(0.11)、7月は0.41(0.46)であった。地点別では、7月のStn.1は1.46個/tであったのに対して、その近傍であるStn.2は0.06個/tで地点間で20倍近い密度差が明らかとなった。これらのことからマイクロプラスチックは海域に一様には分布しておらず、現存量の評価の際には注意が必要であろうことを示している。 2つ目は、水深が100mを超える水域に生息している底生魚でもマイクロプラスチックの誤食が生じているかどうかを明らかにした点である。供試魚はトロール操業により漁獲されたキダイ(n=20)、サギフエ(39)、マトウダイ(59)、カナガシラ(44)、マアジ(46)、カイワリ(73)を用いた。その結果、カナガシラ以外の魚種のすべてで胃内容物中にマイクロプラスチックが見つかった。 これらの結果の一部は、第67回日本生態学会大会、International Conference on Fisheries Engineering 2019、日本動物学会第90回大阪大会2019などで発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、①マイクロプラスチックの現存量調査を継続するとともに、主に②魚介類の消化管内に含まれるマイクロプラスチック量を明らかにして、③海産魚の飼育実験の予備試験を行う予定であった。現在までに①と②は計画通りの結果が得られているので順調に進展していると考えて良いだろう。また、③については研究の進捗状況と新型コロナのパンデミック等を見越して2019年11月29日付けで前倒し支払い請求をして飼育関連設備等を早めに充実させた。このように、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展しているが、現在(2020年5月時点)は新型コロナの影響で飼育実験が実施できていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、基本的には申請計画通りに①マイクロプラスチックの現存量調査の継続と②室内飼育実験による誤食メカニズムを明らかにする。現存量調査は、従来の表層のみを対象にしたニューストンネットに加えて、水深を変えて曳網できるモックネスを導入する予定でいるが、新型コロナの影響で練習船が動いておらず未定である。また、2019年度の研究成果を踏まえて室内飼育実験はマイクロプラスチックの環境暴露中の変化と誤食に与える影響を新たに明らかにする予定であるが、上述のように飼育実験が未だ行えていないので、動静を見守り対処していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
飼育関係の設備の充実と、現有の実体顕微鏡より倍率が高く精密な観察ができる正立顕微鏡を導入するために、前倒し支払い請求を行い認められた。次年度使用額は、想定よりも安価で購入できたことにより前倒し請求額と実際の物品費に生じた差である。次年度使用額は、当初の計画を実行するために充てられ使用する計画である。
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