研究課題/領域番号 |
18K14791
|
研究機関 | 公益財団法人黒潮生物研究所 |
研究代表者 |
戸篠 祥 公益財団法人黒潮生物研究所, 研究部局, 主任研究員 (30814397)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ハブクラゲ / ポリプ / プラヌラ / 生活史 / 刺傷被害 / 箱虫綱 / 生態 / 飼育観察 |
研究実績の概要 |
2019年度はハブクラゲのポリプを得るため、沖縄本島にてハブクラゲの成熟個体を採集した。捕獲したハブクラゲからは多数の受精卵が得られ、それらを用いて飼育実験を行った。卵は沈性卵で、立方クラゲ特有の眼点をもつプラヌラへ発達した。プラヌラの眼点の分布様式は種によって違いがみられることを確認した。また、プラヌラは芋虫状または壺状の初期ポリプへ発達した。初期ポリプは様々な水温や塩分条件下で飼育し、定着状況、形態変化、行動を記録した。また、初期ポリプには給餌を行い、成熟ポリプへ育成させるため飼育観察中である。 また、本年度は立方クラゲ綱のポリプとクラゲを再精査し、形態的特徴を整理した。これを基に、ポリプとクラゲの種の検索表を作成することができた。特に生活史に関する情報が乏しいハブクラゲ目には有効な種同定のツールになると考えられる。ハブクラゲの稚クラゲは、ハブクラゲ目の一種リュウセイクラゲに酷似しており、成長に伴う形態変化を把握したうえで種同定する必要があると考えられる。 ハブクラゲ属Chironexは世界の亜熱帯や熱帯の浅海域に広く分布するが、東南アジア(フィリピンやタイ、ベトナム)ではそれぞれ種分化が進んでいる可能性が考えられる。本年度はタイ産Chironexの標本を精査し、複数種の存在を確認した(Toshino et al. in prep)。主な違いは葉状体および触手数、葉状体管屈曲部の形状であるが、DNA分析とあわせてより確実に種同定する必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年に引き続き、天候不順(大雨や台風)で採集調査が十分に実施できなかった。また、初期ポリプの成長が遅く、成熟ポリプへ育成させることができていない。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度は現在飼育中の初期ポリプを成熟ポリプまで育てて、増殖速度やクラゲへの変態過程、変態条件を調べる。また、プラヌラの定着実験を行い、定着する基質選択性があるのかどうか調べる。また、ハブクラゲ目の1種リュウセイクラゲの飼育実験をあわせて行い、生態的な違いなどを比較する。
|