本研究課題では、鹿児島県十島村口之島のセランマ温泉にて生息・繁殖するリュウキュウカジカガエルを対象に行動観察や分子実験を行うことで、カエルが温泉に生息するという珍しい現象の理解を目指している。 最終年度である2020年度は、温泉集団の野外観察で得られたデータをまとめ、本種の幼生および成体が高水温を避ける行動を示すことを報告した。 またRNA-seqにより得られたデータを用いて、幼生が水温変化に晒された際に発現変動する遺伝子やその機能について解析を進めた。 近縁種であるBuergeria otai より得られたRNA-seqデータの解析も行い、高温下では転写・翻訳抑制やタンパク質分解に関連すると思われる遺伝子の発現変動を観察した。 温泉地帯においても源泉からの距離や流路、あるいは気温によって水温は変化する。温泉に生息する集団では、温度の高い水域を避ける行動をとること、さらに高水温に晒された場合は抑制的な発現応答により熱ストレスをやり過ごすことで温泉での生息を可能にしていると考えられる。
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