研究課題/領域番号 |
18K14798
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
下地 博之 関西学院大学, 理工学部, 助教 (50726388)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 共生細菌 / 免疫 / 社会性昆虫 / 社会性免疫機構 |
研究実績の概要 |
多くのアリ種は地中という閉空間で高密度で営巣するため、コロニー内で病気が広がる事を防ぐ仕組みを進化させていると考えられている。これは、社会性免疫機構と呼ばれ、特異的な個体間相互作用パタンによって女王や幼虫などが存在する空間へ病気を持ち込ませない仕組みである。また、本研究で用いる日本産トゲオオハリアリのワーカーの腸内には1種の共生細菌が存在することが知られており、この共生細菌の機能として免疫に着目して以下の実験を行なった。まず初めに、野外から巣外で働く外役ワーカーと巣の内部で幼虫の世話を行う内役ワーカーを採集して、6種類の免疫関連遺伝子の発現解析を行なった。その結果、外役ワーカーではImd経路が内役ワーカーに比べて活性化している事が明らかになった。この結果は外役ワーカーが巣外で何らかの微生物に感染していたとしても、巣内の深部にはそれらが到達していない可能性を示唆するものである。次に、トゲオオハリアリの共生細菌がワーカーの免疫に与える影響を調べた。抗生物質によって共生細菌を除去した外役ワーカーと内役ワーカーに病原性細菌を感染させて生存時間分析を行なった。その結果、外役・内役ワーカーにおいて、共生細菌を除去していないコントロールに比べて生存率が統計学的に有意に減少した。また、共生細菌を除去した内役ワーカーの生存率は同様の処理の外役ワーカーに比べて高いことがわかった。先行研究により、内役ワーカーに比べて外役ワーカーでは保持する共生細菌の絶対量が少ない事が明らかになっている。これらの結果を合わせると、内役ワーカーは高い免疫応答を示すことができる一方で、外役ワーカーでは低い免疫力を共生細菌を保持することで高めている事が示唆される。今後は共生細菌と免疫活性の関係を調べていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共生細菌の存在がワーカーの免疫に関係する事を調べる事ができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は新型感染症の影響で、長期観察を要する飼育実験がうまく進まなかった。次年度度は、観察期間を短縮することで対応していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は新型感染症の影響で予定していた実験を行う事ができなかったため次年度へ予算を繰り越す。次年度は、共生最近の有無によって病原性細菌に対するホストの抵抗性を遺伝子発現解析と飼育実験から調べる予定である。
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