研究課題/領域番号 |
18K14802
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研究機関 | 滋賀県立琵琶湖博物館 |
研究代表者 |
田畑 諒一 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 学芸員 (00793308)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ミトコンドリアゲノム / 琵琶湖 / 淡水魚 / 共進化 / 分子進化 / 自然淘汰 / 遺伝子浸透 / 系統地理 |
研究実績の概要 |
本研究は、ミトコンドリアゲノム(ミトゲノム)で自然淘汰や遺伝子浸透が生じた際、それに対応する核ゲノム内のミトコンドリア関連遺伝子における分子進化や発現量の変化を複数の淡水魚類で明らかにする。それによって、集団分化や交雑、適応などの進化的現象下での核―ミトゲノム間の共進化パターンやそこで生じる可能性がある不和合回避(緩和)の一般則を推定することを目的とする。そのため、(1) ミトゲノム、核ゲノム中のミトコンドリア関連遺伝子について、アミノ酸置換などの分子進化パターンを遺伝子間、系統間で比較する、(2) 様々な交雑段階のグループを用いて、核ゲノム中のミトコンドリア関連遺伝子群の浸透のパターンや発現量を核ゲノムの他の遺伝子と比較することを主とし、併せて(3) 各魚種および交雑個体の代謝能力等に関連する基礎データの収集を行うものである。 2年目も前年に引き続き、(1)・(2)についての遺伝子座の遺伝情報を集めるために、MIG-seq法やRAD-seq法、ゲノムリシーケンシングによるDNA配列データの取得を対象としている複数の分類群に対して行った。また、主要な固有種の一部個体については、リファレンスおよび系統解析・分子進化解析のために、ドラフトゲノムの決定を別プロジェクトの研究グループと共に行っている。今年度はこれまでドラフトゲノムが全く決まっていない琵琶湖固有種のデータ取得について、stLFR法を用いて行った。(3)については、通常個体の飼育は行ったが、交雑個体の採集や作出が新型コロナウイルスの影響で出張自粛となったため、飼育・産卵用の個体の確保ができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度同様、対象種群や実験手法の変更など、一部について研究計画の変更を行った。(1)および(2)については、比較のための中立遺伝座のデータをMIG-seq法およびRAD-seq法から当初目的の通り得ることは当初目標を超えてできていると考えられる。その中で一部種群については、遺伝的集団構造・系統地理的結果から新たな知見が得られたため、論文を公表した。また他にも論文執筆の準備に入っているものもある。ミトゲノムおよび核ゲノム中のミトゲノム関連遺伝子の共進化パターンのためのデータ取得については、ドラフトゲノム配列取得は当初目標並、もしくはそれ以上で行えている。一方でリシーケンシングによる配列取得はできているが、解析にやや遅れが出ている。3年目前半に未着手の種群についてデータ取得を行い、それと併せてこれまでの種群についても解析を行う。(3) については、2年目年度末に採集予定だったが新型コロナウイルスによる出張自粛で新規個体の確保ができなかったため、来年度に持ち越す予定であり、場合によっては、既存サンプル多個体のゲノム解析(既に別プロジェクトで着手済み)など、代替案に変更していく。
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今後の研究の推進方策 |
1、2年目に得られた中立遺伝子座データやドラフトゲノムデータ、ゲノムリシーケンスデータをベースに、未着手の種群のデータを加えて、本研究計画の中心となるミトゲノムおよび核ゲノム中のミトゲノム関連遺伝子の共進化パターンの解析を進めていく。2年目年度末から研究協力者とは打ち合わせを行っており、発現量解析など、一部実現が困難になる可能性があると想定される研究項目については、リファレンスや多個体のゲノムリシーケンシング解析を使うことにより解析深度の少なさをカバーする別手法によるアプローチを試みている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2年目後半に実施を予定していた学会年会へ出席するための出張や実験試料採集のための出張,および外部業者へのシーケンシング委託業務が新型コロナウイルス感染症拡大防止のため,中止となったため,当該助成金の残額が生じた.これらは3年目に行うため,3年目の請求助成金と併せて使用されることとなる.
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