研究課題
【本研究の目的】琉球諸島は日本列島最南端の島嶼であり、集団遺伝学研究により琉球諸島ヒト集団の形成プロセスが明らかにされてきた。マイクロアレイを用いた全ゲノム解析では、日本列島集団は本土と琉球諸島の2つのクラスターに分かれ、琉球諸島の人々は本土の人々とは異なる集団形成史をたどったことが示唆されている。また琉球諸島内の島々の間でも遺伝的な違いが報告されている。また琉球諸島民は考古学の調査により本土と異なる文化を形成していたことが明らかにされ、気候面ではこの島嶼は日本で唯一亜熱帯気候に含まれる。すなわち、彼らは本土と異なる環境で生存してきたとともに、それぞれの島においても独自の過程を経て現代の集団が形成されたことが示唆される。感染症はヒトの生存を左右する環境要因の一つであり、選択圧となった可能性が議論されてきた。例えば、アフリカ集団ではマラリアとの正の自然選択との関係があきらかにされている。マラリアは、琉球諸島の一部地域が古くからの流行地であったことが知られている。また、ヒトは多様な自然環境に遭遇し適応進化を重ねてきたが、当時は適応的だった多型が現代では疾患の原因となる例がある。遺伝子の分化と集団の系統との関連はよく調べられてきた一方で、琉球諸島で起こった自然選択に関する研究は少なく、異なる島の地域集団間での自然選択の検証や比較、及び全ゲノム配列を用いた詳細な研究は未だ行われていない。本研究では、琉球諸島の地域集団に生じた適応進化の可能性を検証し、それらは現在の集団へはどのような影響を与えているのかを明らかにするために、全ゲノム配列を用いた集団遺伝学解析を行う。【研究の成果】既に収集済みの沖縄島出身者25検体、宮古島出身者25検体の全ゲノム配列情報を用いて集団構造解析を実施した。また2018年度に新たに西表島出身者6検体についてHiSeqXを用いて全ゲノム配列を取得した。
2: おおむね順調に進展している
計画通りに進行しているため。
全ゲノム配列取得が完了した西表島出身者のデータ及び別研究費で配列解析した久米島出身者60検体と西表島出身者25検体を加えて解析を進める。その結果をもとに、新規でゲノム配列解析する検体を検討する。また、正の自然選択の痕跡の検出も実施する。
当初の計画よりも旅費が抑えられたため次年度使用分が生じた。こちらは翌年度の旅費として使用する予定である。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Annals of Human Biology
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1080/03014460.2019.1582699
PLOS ONE
巻: 13 ページ: e0200170
10.1371/journal.pone.0200170