研究課題/領域番号 |
18K14807
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
李 相逸 北海道大学, 工学研究院, 助教 (70738880)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 室内光環境 / 壁の配色 / 反射光 / 光の非視覚的作用 / ヒト |
研究実績の概要 |
今年度は、ヒトの非視覚的作用を考慮した室内の光環境を示すマップを作成することを目標に研究を行った。実験1では、特殊な箱を製作し、LEDファイバー光(6500 K)に対する12色の壁紙の反射光の放射照度を測定し、照度とm-lux(非視覚的作用への影響を重みづけた値)を算出した。その結果、白色条件を基準に黄色条件での照度は約23%のみ減少するに対し、m-luxは約70%も減らせることが確認された。実験2では、実験室(幅2.6×奥行2.6×高さ2.2 m)の真ん中の天井にLED照明を設置し、照明の色温度(5000 K、2000 K)、壁の反射特性(白、青、赤、黄)、光曝露位置(部屋を同面積で9等分)の組み合わせによる照度(lx)とメラノピックルクス(m-lux)などについて検討した。その結果、各壁色条件における照度は照明の色温度の影響を大きく受けていなかった。白色光(5000 K)で測定位置による照度のばらつきは、白壁で130~252 lx、黄壁で90~183 lx、青壁で16~135 lx、赤壁で27~136 lxであり、白壁と黄壁に比べて青壁と赤壁での照度のばらつきが激しいことが確認された。各壁色条件におけるm-luxは照明の色温度に大きく受け、暖色光(2000 K)に比べて白色光(5000 K)で全体的に約60%大きい値を示していた。白色光(5000 K)で測定位置によるm-luxのばらつきは、白壁で109~221、黄壁で23~118 lx、青壁で35~135 lx、赤壁で10~110 lxであり、黄、青、赤壁条件の間に大きな差はみられず、白壁条件に比べて測定位置によって約50~90%低いことが確認された。以上より、実生活で黄色の壁を使用することによって、明るさを確保しながら非視覚的作用への影響を減らせる可能性が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19パンデミックにより、極力被験者実験を控えていたため。
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今後の研究の推進方策 |
今のところ、COVID-19の状況はまだ楽観できないが、今年度に得られて結果を踏まえて、異なる壁の配色がヒトのメラトニン分泌と概日リズムの位相に及ぼす影響について検討を行う。COVID-19感染予防対策として、一回の実験に参加できる被験者を1名に制限し、実験当日は「新型コロナウイルス抗原測定キット」でテストを行い、陰性反応を確認した上で実験を実施する。万が一、寝泊りの被験者実験が実施できない場合は、瞳孔反射や覚醒度について検討するなど、比較的に簡単な実験を計画・実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の予算執行の予定では、人件費(被験者謝金、実験補助)、実験に必要な消耗品など購入費、旅費(学会参加、研究打ち合わせなど)などが含まれていた。しかし、COVID-19パンデミックの状況により、被験者実験を極力控えていたこと、またほとんどの学会が中止、またはオンライン開催になったことにより、研究活動に伴う費用がほとんど発生しなかった。そのため、次年度使用額が生じた。
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