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2018 年度 実施状況報告書

全ゲノム解析と生理情報から構築する新しい高地適応モデル

研究課題

研究課題/領域番号 18K14808
研究機関長崎大学

研究代表者

西村 貴孝  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (80713148)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード高地適応 / 生理的多型 / 遺伝子多型
研究実績の概要

現生人類はその拡散の過程において、様々な環境に適応していった。その中でも、高地に進出した集団は、生体内の酸素レベルを維持するために多様な適応様式を有する。代表的な集団として、南米のアンデス集団は換気亢進やヘモグロビン濃度の増加によって酸素レベルを維持するとされる。一方で、中央アジアのチベット集団はヘモグロビン濃度の増加を抑制し、高い血流量によって慢性高山病のリスクを抑える適応を示す。このように集団の特性を捉えた研究がこれまで報告されてきたが、集団内における生理的多様性や、その多様性をもたらす要因についての議論は十分ではなかった。そこで本研究ではアンデス集団とチベット集団の生理値と遺伝情報から、両集団を比較しつつ、各集団内における生理的多様性と遺伝要因の関連を明らかにし、新しい高地適応モデルを構築する。
本研究はアンデス集団の若年成人男女約100名の生理データを取得した。測定項目は形態測定に加えて、血中酸素飽和度を、ヘモグロビン濃度、血圧、心拍数等であった。チベット集団についても地域住民約200名の生理データを取得した。現在、ヘモグロビン濃度について検討しており、ヘモグロビン濃度は男女差があり、アンデス集団、チベット集団ともに女性は男性に比べて低値であった。低地集団においてもヘモグロビン濃度は女性で低いため、この男女差は高地集団でも共通であると考えられた。さらに遺伝的要因としてヘモグロビン濃度との関連が指摘されている、EPAS1遺伝子やEGLN1遺伝子との関連を調べるために、TaqMan probeを用いたSNP(一塩基多型)解析を行っている。並行して、アンデス集団の全ゲノム領域の網羅的解析を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

アンデス集団、チベット集団のTaqMan probeを用いた遺伝的解析を順調に進めている。DNAの質の問題により、タイピングのできない検体が存在するため、DNAの再抽出を含めて解決策を検討中である。

今後の研究の推進方策

いわゆるチベット型と適応をもたらすEPAS1遺伝子の変異はアンデス族では見られなかった。ただし、これは既知のSNPを調べているので、アンデス族においては未知の遺伝的変異があるかもしれない。着実に、全ゲノム規模での解析を進めて研究を進めていく。

次年度使用額が生じた理由

DNAの質の問題で、全ゲノム規模の網羅的解析が一部実施できなかっため、当該解析を延期したことによる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Association of EGLN1 genetic polymorphisms with SpO2 responses to acute hypobaric hypoxia in a Japanese cohort2018

    • 著者名/発表者名
      Yasukochi Yoshiki、Nishimura Takayuki、Motoi Midori、Watanuki Shigeki
    • 雑誌名

      Journal of Physiological Anthropology

      巻: 37 ページ: 9

    • DOI

      10.1186/s40101-018-0169-7

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Current health status and its risk factors of the Tsarang villagers living at high altitude in the Mustang district of Nepal2018

    • 著者名/発表者名
      Koirala Sweta、Nakano Masayuki、Arima Hiroaki、Takeuchi Shouhei、Ichikawa Tomo、Nishimura Takayuki、Ito Hiromu、Pandey Basu Dev、Pandey Kishor、Wada Takayuki、Yamamoto Taro
    • 雑誌名

      Journal of Physiological Anthropology

      巻: 37 ページ: 20

    • DOI

      10.1186/s40101-018-0181-y

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 温熱と適応 -生活習慣の変容による人類の温熱環境適応能の潜在化と顕在化-2018

    • 著者名/発表者名
      若林 斉、前田 享史、西村 貴孝
    • 雑誌名

      日本生理人類学会誌

      巻: 23 ページ: 167~170

    • DOI

      https://doi.org/10.20718/jjpa.23.4_167

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ヒトの寒冷適応とUCP1遺伝子多型との関連2018

    • 著者名/発表者名
      西村 貴孝
    • 学会等名
      日本生理人類学会第78回大会
    • 招待講演
  • [学会発表] Human cold adaptation and importance of UCP1 genotype to non-shivering thermogenesis2018

    • 著者名/発表者名
      Takayuki Nishimura
    • 学会等名
      Physiological Anthropology and Human Ecology: Studies in Modern and Ancient Populations
    • 国際学会
  • [学会発表] ボリビア高地集団における循環動態の高度差による影響2018

    • 著者名/発表者名
      西村貴孝,大西真由美,西原三佳,Juan Ugarte,安河内彦輝,福田英輝,安部恵代,有馬和彦,富田義人,本井 碧,綿貫茂喜,青柳 潔
    • 学会等名
      日本生理人類学会第77回大会

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公開日: 2019-12-27  

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