研究課題/領域番号 |
18K14812
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
松本 直之 金沢大学, 医学系, 助教 (20774756)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | フェレット / 大脳皮質 / 脳回 / FGFシグナル / 高等哺乳動物 |
研究実績の概要 |
ヒトのような高等哺乳動物にみられる大脳皮質の脳回は、大脳皮質の拡大と高次脳機能の獲得に重要と考えられているが、脳回形成の分子機構についてはほとんど明らかになっていない。我々の研究室ではこれまでに、脳回をもつ高等哺乳動物フェレットの大脳皮質への遺伝子操作技術を確立し、その技術を用いて線維芽細胞増殖因子(FGF)シグナルの活性化が脳回形成に十分であることを明らかにしてきた。そこで本研究課題ではまず、脳回形成における内在的なFGFシグナルの重要性を検証した。フェレットの大脳皮質に優性不能型FGF受容体を発現させた結果、脳回形成が阻害されたことからFGFシグナルが脳回形成に必要であることがわかった。さらに組織レベルでの解析を行った結果、優性不能型FGF受容体により高等哺乳動物に特徴的な神経前駆細胞(oRG)が減少していたことから、oRGが脳回形成に重要である可能性が考えられた。今後、多種類存在するFGFリガンド、FGF受容体のなかでどのリガンドと受容体が脳回形成に重要なのかを検証するために、1)脳回形成時期のフェレット大脳皮質におけるFGFリガンドとFGF受容体の発現の解析を行い、2)これらの候補遺伝子に対するCRISPR/Cas9をフェレット大脳皮質に導入し、脳回形成に必要な特定のFGF経路を解明する。さらに3)脳回形成に重要であることが分かったFGFのマウスでの発現分布を解析する。もしフェレットで発現が見られマウスでは発現が見られなければ、その発現変化が進化的に脳回獲得に至る鍵となるステップである可能性がある。そのような分子についてはマウスで過剰発現し、本来脳回がないマウス大脳皮質で脳回形成が起こるか検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、フェレットの大脳皮質に優性不能型FGF受容体を発現させた結果、脳回形成が阻害されたことからFGFシグナルが脳回形成に必要であることがわかった。さらに組織レベルでの解析を行った結果、優性不能型FGF受容体により高等哺乳動物に特徴的な神経前駆細胞(oRG)が減少していたことから、oRGが脳回形成に重要である可能性が考えられた。さらにフェレット大脳皮質に発現しているFGFリガンド、FGF受容体を同定するために、in situ hybridization用のprobeの作成が完了している。また、どのFGFリガンド、FGF受容体が脳回形成に重要か検討するためのCRISPR/Cas9コンストラクトの作成も開始している。当研究室ではすでに、フェレット大脳皮質にCRISPR/Cas9を導入することにより、遺伝子ノックアウトができることを報告しており、CRISPR/Cas9を用いたFGFリガンド、FGF受容体の機能解析を行う準備は既に万全である。
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今後の研究の推進方策 |
今後、多種類存在するFGFリガンド、FGF受容体のなかでどのリガンドと受容体が脳回形成に重要なのかを検証するために、脳回形成時期のフェレット大脳皮質におけるFGFリガンドとFGF受容体の発現の解析を行い、これらの候補遺伝子に対するCRISPR/Cas9をフェレット大脳皮質に導入し、脳回形成に必要な特定のFGF経路を解明する。続いて、脳回形成に重要であることが分かったFGFのマウスでの発現分布を解析する。もしフェレットで発現が見られマウスでは発現が見られなければ、その発現変化が進化的に脳回獲得に至る鍵となるステップである可能性がある。そのような分子についてはマウスで過剰発現し、本来脳回がないマウス大脳皮質で脳回形成が起こるか検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物購入費を計上している。さらに動物維持費としてエサや床敷き購入費用を見込んでいる。それに加え、常時使用する試薬、免疫染色用の抗体、遺伝子工学キット(Miniprep, Maxiprep, TA cloning, DIG labeling kit など)、酵素類(Taq, RNA polymerase など)、プラスチック器具(プレート、チップ、シリンジ、ディッシュなど)を購入する。
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