研究課題/領域番号 |
18K14816
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
黒田 啓介 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (80631431)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | シグナル伝達機構 / 神経科学 / Rho kinase / RhoA / 神経回路 / シナプス / 行動解析 / 細胞腫特異的 |
研究実績の概要 |
細胞内シグナル伝達機構を分子レベルで解明することは生命現象の理解に非常に重要である。しかしながら、脳はヘテロな細胞集団で構成されており、細胞種毎にその細胞内シグナルは異なるため、これまでの神経科学では、これらを個体内で個別に解析することは手間と費用の問題から現実的ではなかった。研究代表者は、細胞種特異的にCreを発現するトランスジェニック(Tg)マウスやアデノ随伴ウイルス(AAV)を組み合わせ、細胞種特異的なシグナル解析を迅速かつ詳細に個体内で行う実験系を確立している。 本研究では、特にRhoファミリー低分子量G蛋白質RhoAおよびその下流分子であるRho-kinaseシグナルについて個体内での細胞内シグナル伝達を解析した。RhoAおよびRho-kinaseの活性を制御するAAVを作製し、マウス脳側坐核に注入した際の発現を確認した。Rho-kinase(rock1, rock2)のダブルコンディショナルノックアウト(Rock1/2 dcKO)マウスを作製し、交配と繁殖を行った。AAV-RhoA/Rho-kinaseをマウス脳側坐核に注入したマウスや、Rock1/2 dcKOマウスを利用し、記憶に関わる行動実験を行った。いくつかの行動実験にて行動が変化した。AAV-RhoA/Rho-kinaseを注入したマウスや、Rock1/2 dcKOマウスのシナプス形態を観察し、RhoA, Rho-kinaseシグナルがシナプス形態の制御に関与していることを確認した。行動実験を行ったマウス脳側坐核からタンパク質ライセートを作製し、RhoAの活性化因子GEFや不活性化因子GAPについてリン酸化状態を検討した。いくつかのGEFやGAPにおいてリン酸化状態が変化していることを確認した。リン酸化抗体を作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、RhoA, Rho-kinaseシグナルがシナプス形態やマウスの行動に関与していることについてはほぼ確認できている。RhoAの活性はRhoGEFやRhoGAPが制御している可能性が非常に高いことを確認している。RhoGEFやRhoGAPが上流のkinaseによってリン酸化されることを確認している。
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今後の研究の推進方策 |
RhoGEFやRhoGAPの活性がリン酸化によって制御されることを確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
RhoA Rho-kinase細胞内シグナル伝達機構の解析のために作製したマウスについて、実験終了後に凍結精子・凍結受精卵を作製し保管する予定であったが、コロナ禍の影響により年度内の作業完了が不可能であったため、凍結 精子・凍結受精卵の作製を次年度に延期する必要が生じた。
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