研究課題/領域番号 |
18K14817
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 洋光 京都大学, 理学研究科, 助教 (30705447)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 超解像顕微鏡法 / 海馬 / 長期増強 / 全反射顕微鏡 / グルタミン酸受容体 |
研究実績の概要 |
シナプスにおける神経伝達物質受容体の局在分布や動態は、情報伝達効率を制御する重要な要因である。そして、この情報伝達効率が変化する現象「シナプス可塑性」は、記憶・学習の細胞基盤と考えられている。本研究では、興奮性シナプス応答を主に担うAMPA型グルタミン酸受容体 (AMPA受容体)に着目し、どの型のAMPA受容体の局在が、どのような動態によって変化することで、シナプス可塑性が発現するのかを超解像度で明らかにする。 平成30年度では、蛍光標識したAMPA受容体の動態や局在を1分子レベルで観察できる光活性化局在顕微鏡法 (PALM: photoactivated localization microscopy) の基礎技術を確立した。具体的には、全反射顕微鏡を用いた独自の実験系において、初代培養したラット海馬神経細胞に、シナプス可塑性の1つである長期増強 (LTP: long-term potentiation) を誘導する刺激を加えた。そして、PALMを用いてmEosで蛍光標識したAMPA受容体サブユニットGluA1を観察し、シナプス後膜内外における動態変化を解析した。また、シナプス後膜裏打ちタンパク質PSD95の局在変化も同様に観察した。さらに、本実験系を発展させて海馬長期抑圧 (LTD: long-term depression) の発現時におけるGluA1や別のサブユニットGluA2のエキソサイトーシス、及びエンドサイトーシスの変化を明らかにした。また、シナプス前終末におけるシナプス小胞の開口放出の可視化にも成功し、その局在分布を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、これまで用いてきた独自の実験系に超解像顕微鏡法を組み合わせて、神経伝達物質受容体の動態や局在を明らかにすることを目的としている。平成30年度では、その追加導入がうまく進みシナプス関連タンパク質の蛍光観察が可能となった。また本実験系を発展させて、LTPとは異なるシナプス可塑性であるLTDの発現機構や、シナプス前終末における開口放出機構の解明にも寄与した。以上の成果より、計画が概ね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度以降では、さらに本実験系を発展させてSTORM (stochastic optical reconstruction microscopy) や SIM (structured illumination microscopy) といった超解像顕微鏡法も組み合わせる。そして、LTP発現時におけるAMPA受容体の動態 (エキソサイトーシス、エンドサイトーシス、側方移動) を可視化し、どのタイミングでどこから受容体がシナプス後膜へ挿入されるのかを明らかにする。
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