研究課題
シナプスにおける神経情報伝達物質受容体の局在分布や動態は、情報伝達効率を制御する重要な要因である。そして、この伝達効率が変化する現象「シナプス可塑性」は、記憶・学習の細胞基盤と考えられている。本研究では、興奮性シナプス応答を主に担うalpha-amino-3-hydroxy-5-methyl-4-isoxazolepropionic acid (AMPA)型グルタミン酸受容体(AMPA受容体)に着目し、どの型の内在性AMPA受容体の局在が、どのような動態によって変化することで、シナプス可塑性が発現するのかを超解像度で明らかにする。令和2年度では、全反射蛍光顕微鏡にSIMといった超解像顕微鏡法を組み合わせた。具体的には、興奮性シナプス後膜を含むスパイン形態とシナプス後膜裏打ちタンパク質PSD95 (postsynaptic density 95) の位置的関係を明らかにした。そして全反射顕微鏡を用いた独自の実験系において、初代培養したラット海馬神経細胞に、シナプス可塑性の1つである長期増強 (LTP: long-term potentiation) を誘導する刺激を加えた。Super-ecliptic pHluorinで蛍光標識したAMPA受容体を観察し、シナプス後膜内外における動態変化を解析した。さらに、本実験系を発展させて、生体温でのシナプス前終末におけるシナプス小胞の個別のエンドサイトーシスの可視化に成功した。また、本実験系を無機化学に応用して、任意のナノ粒子を細胞へマイクロインジェクションする新技術の土台を構築した。
2020年8月、京都府の広報サイト「知の京都」にて研究紹介した。
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Advanced Optical Materials
巻: 1 ページ: 2100033
10.1002/adom.202100033
月刊細胞
巻: 53 ページ: 51-55
https://www.pref.kyoto.jp/sangyo-sien/specialist/tanakahiromitu.html