研究課題
グリア細胞の一種であるアストロサイトは、分子レベルおよび機能的に不均一な集団であることが示唆されているが、特に成体脊髄における亜集団の存在やその意義については未だ不明である。代表者は成体脊髄後角におけるアストロサイト亜集団の同定および感覚情報伝達における役割を明らかとしてきた。本研究では、代表者が同定したアストロサイト亜集団(Hes5陽性)の形成メカニズムを解明するため、H30年度は以下の項目を検討した。項目1.成体における脊髄後角アストロサイト亜集団形成メカニズムの解明<1>Hes5CreERT2/Rosa-tdTomatoマウスを用いて、生後各時期におけるHes5陽性細胞の分布および細胞種について免疫染色を用いて検討したところ、生後直後から成体にかけてその分布が徐々に脊髄後角の表層へと限局していくこと、また細胞種についても成長に伴いアストロサイトの特異性が高くなることが明らかとなった。<2>Hes5の発現制御に重要であることが示唆されているNotchシグナルのリガンドについて脊髄および後根神経節(DRG)におけるmRNAレベルでの発現について検討した所、特にDRGにおいてその発現が優位な分子を同定した。項目2.Hes5陽性脊髄アストロサイトにおける特徴的な分子発現パターンの解析脊髄アストロサイト特異的な遺伝子発現解析を目的とするため、anti-astrocyte cell surface antigen-2 抗体を用いた細胞分取法の確立に取り組み、アストロサイトを特異的に分取する至適条件を決定した。
2: おおむね順調に進展している
発達に伴う脊髄アストロサイト亜集団の分布変化および亜集団形成を決定付ける因子の候補を見出すことに成功し、また組織より脊髄アストロサイトを分取する方法の確立を行ったため、本年度の研究計画の目的はほぼ達成されたと考えられる。
本年度における検討項目が計画通りに達成できたことから、次年度は当初の計画通りに以下の項目について実験を遂行する。項目1.Hes5の発現制御に関わるシグナル分子について、マウスやウイルスベクターを用いたノックダウン実験によりその関与について検討を行う。項目2.転写因子のしてのHes5の機能について明らかとするため、ウイルスベクターを用いたノックダウン実験を行い、各種遺伝子発現変化について解析を行う。項目3.脊髄同様に脳におけるHes5陽性細胞の分布および細胞種に関する解析を行う。
すべて 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Journal of Pharmacological Sciences
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http://life-innov.phar.kyushu-u.ac.jp/index.html