研究課題/領域番号 |
18K14822
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
片山 雄太 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (70725085)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ASD / CHD8 / モデル動物 |
研究実績の概要 |
自閉スペクトラム症(ASD)はコミュニケーション障害や行動の限局性を特徴とする発達障害であり、1%を越える高い有病率から近年特に注目を集める精神疾患の1つである。本研究は申請者が作製した信頼性の高い自閉症動物モデルであるCHD8変異マウスを用いて、自閉症の発症メカニズムを明らかにすることを目的としている。特に責任脳領域と責任細胞種を同定することがASDの病態を理解する上で非常に重要であることから、各種細胞種特異的なCHD8変異マウスを作製し、行動解析実験によって対象細胞種のASDへの関与に検証を進めている。平成30年度は先行して解析を進めていたオリゴデンドロサイトについてASDとの関わりがあることを明らかにした。オリゴデンドロサイト特異的にCHD8をヘテロ欠損したマウスはASD様の行動異常である不安様行動と社会性行動の異常を示した。さらに神経伝達に重要な役割を果たすミエリン髄鞘の形成が障害されており、これにより神経伝達速度が低下していることを発見した。この結果はオリゴデンドロサイトがASDの原因の1つであることを意味しており、神経伝達速度の異常がASDの病態を引き起こすことを示した重要な発見であると考えており、現在この成果を論文投稿中である。 しかしオリゴデンドロサイトの異常だけではASDの病態を完全に説明できるわけではないことも明らかになっているため、他の細胞種についてもコンディショナルノックアウトマウスを作製中であり、これらのマウスの解析を次年度の研究計画としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、先行して進めていたオリゴデンドロサイトとの関わりについては研究成果を論文投稿中であり、次年度に解析予定のマウス作製についても期待通りに進捗している。次年度に計画している神経性理学的解析についてもfMRIのデータは取得済みであることから順調に推移していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在作製中の各細胞種特異的CHD8変異マウスが準備でき次第、行動解析実験によって各細胞種とASDの関わりを明らかにする。また、fMRIに加えて全脳イメージングについてもデータ取得を進めており、今後データ解析を進めることで責任脳領域の同定を目指す。 当初の計画にはなかったが、もしオリゴデンドロサイトに加えて新たな責任細胞種が同定された場合には複数の責任細胞種の組み合わせや、細胞間の関わりについても動物モデルを用いて検証を進めたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究用資材の年度内購入が出来なかったため。 資材入手後は6月までに当初の研究計画を達成することが出来る。
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