研究実績の概要 |
嗅覚の一次中枢である嗅球では、嗅球では、脳室下帯に存在する神経幹細胞から生涯にわたって新生ニューロンが供給される一方、古いニューロンは細胞死によって除去されている。近年の研究では、新生ニューロンが匂いの嗅ぎ分けを始めとする様々な嗅覚機能に重要な役割を果たすことが報告されている。したがって、嗅球においては、ニューロンが再生することによる細胞レベルでの神経回路の再編成が、嗅覚機能の発現基盤になると考えられている。しかし、ニューロンの再生を制御するメカニズムについては十分に研究されていない。応募者らは、2 光子顕微鏡を用いた嗅球ニューロンのin vivoイメージング法を確立し、ニューロンが死んだ場所で同じ種類のニューロンが再生するメカニズムを報告した(Sawada et al., J Neurosci, 31, 11587-11596, 2011)。さらに最近、嗅球のミクログリアが、死んだニューロンを貪食することを見いだした。そこで本研究では、嗅球におけるニューロン再生において、ミクログリアによる死細胞の貪食が果たす役割を解明し、その生物学的意義を明らかにすることを目的とした。 令和2年度は、成体嗅球ニューロンの再生過程および嗅覚機能におけるミクログリアによる死細胞貪食の役割を明らかにするために、貪食阻害活性を示す分子を用いて解析を実施した。さらに、ミクログリアが成体嗅球においてニューロンの再生を促進する分子メカニズムを解析した。
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