研究課題/領域番号 |
18K14830
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
貝塚 剛志 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 訪問研究員 (40782032)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | シナプス / シナプス後肥厚 / PSD / プロテオミクス / 自閉症 / 自閉スペクトラム症 |
研究実績の概要 |
シナプス後肥厚(postsynaptic density, PSD)は興奮性シナプスの細胞膜直下に存在する巨大なタンパク質複合体である。PSDは神経伝達物質受容体や足場タンパク質、シグナル伝達分子など、1000種類以上のタンパク質から構成されている。生後の各発達段階におけるマウスの脳から精製したPSDのプロテオーム解析を行ったところ、発達期に増加するタンパク質、減少するタンパク質がそれぞれ数百個同定された。これらの中にはシナプスの成熟や形成・除去に関わるとされる分子が多数見出された。よって、PSDにおけるこれらのタンパク質の増加・減少が発達過程におけるシナプスの形態や数の変化に寄与しているものと考えられた。本研究ではさらに発展的な展望として、このPSD構成因子の変化と精神疾患、特に自閉スペクトラム症(以下自閉症)の関係を解析することとした。自閉症の患者では、形成されたシナプスの刈り込みが不十分であることが報告されており、これはシナプスがより未成熟な状態であることを示唆している。そこで、自閉症患者の死後脳のトランスクリプトームのデータをダウンロードし、上記PSDプロテオームのデータと比較したところ、自閉症患者の脳では発達期に増加するPSDタンパク質をコードする遺伝子の発現が顕著に低下していることが明らかとなった。よって、自閉症患者におけるシナプスの異常には、PSD構成因子のリモデリングが正常に行われていないことが関係している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PSDのプロテオーム解析およびデータの解析はおおむね順調に実施できている。数値解析は基本的に全て統計ソフトRにより実施しているが、全て独学で行っているため、計算のプロセス等の妥当性について、今後専門家とのディスカッションにより確認する必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの研究結果から、自閉症の脳では発達期のPSD構成因子のリモデリングが十分に起こっていないと考えられる。しかしながら、これは既存のトランスクリプトームデータとの比較からの推測でしかない。よって、今後は自閉症モデルマウスのPSDのプロテオーム解析を行い、実際に自閉症の脳でPSDの成熟不全が観察されるかどうかを検証する。自閉症モデルマウスとしては、まず所属研究室で開発された15番染色体重複モデルマウス(Nakatani et al. Cell. 2009 137:1235-46)を用いる。
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