研究課題/領域番号 |
18K14834
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
近藤 大輔 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (90708364)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | コンドロイチン硫酸 / グリア構造 / バスケット細胞 / 大脳皮質 / フェロモン / 系統発生 / 動物種差 |
研究実績の概要 |
本研究は、近年神経細胞の可塑性に影響を与えることが明らかになりつつある非細胞性グリア構造について、特にコンドロイチン硫酸を糖鎖に含む酸性グリア構造に着目している。このグリアは抑制性介在細胞であるバスケット細胞の周囲に限局することが知られており、令和元年度は大脳皮質の4領域におけるバスケット細胞の脳内分布の多様性を詳細に明らかにした。 大脳皮質はその層構造により新皮質・中間皮質・原皮質・古皮質に分けられ、それぞれにおけるバスケット細胞の比率を、レクチンVVAを用いた組織化学的手法によって解析した。原皮質領域ではバスケット細胞の比率はやや低く、古皮質領域では非常に低かった。対照的に、中間皮質領域ではバスケット細胞の比率が新皮質よりも顕著に高かった。また全ての領域において、神経回路の出力側の層においてバスケット細胞の比率が高いことが示された。以上の結果より、バスケット細胞による投射神経細胞の発火制御の依存程度は各領域によって大きく異なっている可能性が示唆された。 加えて令和元年度は、神経細胞に関連する糖鎖の動物種差についても検証した。神経細胞が分布するフェロモン受容器において、糖鎖が神経細胞とリガンドの結合に重要な役割を有していることが知られており、またその糖鎖の性質が哺乳類種によって多様であることが知られていることから、8種の哺乳類種におけるフェロモン受容器の分泌糖鎖の性質(中性か酸性か)を系統発生学的に解析した。 霊長類やげっ歯類を含む真主齧類の多くではフェロモン受容器に分泌されるムコ多糖類が中性であり、反芻類やコウモリ類を含むローラシア獣類では食肉類を除いて酸性であることが明らかとなり、国際学術誌へ発表した。以上の結果から、神経細胞に関連する糖鎖の性質に系統発生な種差が存在する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和元年度では、前年度までに得られていた大脳皮質内における領域ごとのバスケット細胞の分布パターンについてより詳細に追究し、統計解析に耐えうるサンプル数を確保した上で空間的分布パターンの作成を達成した。その一方で、申請時において今年度の内容として計画してた個体発生における変化(時間的分布パターン)については、現段階で検証できていないことから、本研究の本筋に関してはやや遅れていると考えられる。 その代替として今年度は、神経細胞に関連する糖鎖の性質に関して、動物種差が報告されているフェロモン受容器に着目し、8種の哺乳動物を比較した。その結果、系統発生学的に糖鎖の性質が異なっていることが明らかとなり、この知見は組織化学分野の国際学術誌『Acta Histochemica』において発表した。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、これまでに得られた大脳皮質内におけるコンドロイチン硫酸含有グリア構造およびバスケット細胞およびの空間的分布パターンについて、学術誌への投稿発表を行う。 加えて、個体発生レベルでの分布パターンの変化を検証し、マウスにおけるそれらの時空間的分布パターンを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度において、今年度行わなかった動物を使用する実験を計画しており、その動物購入費として次年度の使用を希望いたします。
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