本研究では、神経の可塑性に影響を与えるコンドロイチン硫酸含有グリア構造(CSG)について、マーカー(レクチンVVA)を用いて、ICRマウス大脳皮質内における局在を追究した。その結果、若齢期の個体においてVV陽性反応は特に白質領域に広く見られたが、12週齢の個体ではその強度が大きく減弱した。一方で、海馬台および梨状皮質Ia層ではVVA強陽性が維持され、この2領域での成体におけるCSGの機能性が示唆された。またレクチンVVAと抗パルブアルブミン抗体を用いた二重染色の結果、大脳皮質のどの領域においても、CSGに囲まれる細胞の90%以上がGABA作動性神経細胞(バスケット細胞)であることが確認された。バスケット細胞の割合は古・原・中間皮質の順に増加しており、本細胞が特に高次皮質の抑制性制御に重要であることが示唆された。 加えて、近年さまざまな病態のモデル動物として確立されているコットンラットについて、ほぼ無症状の正常圧水頭症が高頻度(30%以上)で発生していることを明らかにし、本種が有用な水頭症の自然発症モデルとなることを提唱した。自然発症した水頭症の特徴的な病態として、大脳新皮質の第V層における非細胞性グリア構造の顕著な減少を発見した。 一部の研究計画の代替として、神経細胞に関連する複合糖質の性質の動物種差を検討するため、化学受容器(フェロモン受容器)で機能する複合糖質を哺乳類8種で比較した。その結果、複合糖質の性質が系統発生学的に区分されることを明らかにした。
|