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2019 年度 実施状況報告書

触覚を担う神経回路の形成メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K14840
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

芝田 晋介  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (70407089)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード感覚神経 / 触覚 / 神経回路網 / 神経回路形成 / 発生
研究実績の概要

本プロジェクトの主目的は、ヒトを含む多くの生物種が生存していくために必要不可欠である「触覚」を担っている神経回路の形成過程を解明することであり、令和元年度は当初の計画通り標的因子群の解析を実施してメカニズムの一端を解明することに成功し、最終年度の令和二年度にMRIや電子顕微鏡を駆使しマクロのMRIから、ミクロの電子顕微鏡解析までの画像解析を実施する。
本研究開始以前までには、末梢神経損傷後や脊髄損傷後の回復過程において、回路形成異常をきたした一部の神経回路の線維が「触覚」の刺激に基づいて「痛み」を生じる回路に異常乗り入れすると考えられていたが、その「痛み」の発生機序はこれまで十分に明らかにはなっていなかった。末梢神経損傷後や脊髄損傷後の回復過程や正常発生の異常によっても起こりうる、この「痛み」の発生機序の詳細を解明するために、「触覚」の異常をきたす複数の遺伝子改変動物に注目し、周囲から触覚情報を得るための神経回路の形成過程に関する基礎的なデータを得ることを目指した本プロジェクトを平成30年度から開始した。初年度には、光学顕微鏡レベルで感覚神経回路の組織異常を可視化することに取り組み、同時に「触覚」に関する行動学的な異常を定量評価することを目指した。二年目となる令和元年度には、次世代シークエンサーを応用して標的因子群の網羅的な解析を実施し、「触覚」の回路形成異常を引き起こす分子群を網羅的に先入観無く捉えることができ、「触覚」の回路形成の分子メカニズムについてその一端を明らかにすることができたと考えている。最終年度である次年度のMRIおよび光学顕微鏡、電子顕微鏡の並行観察を実施することにより、マクロのMRIからミクロの電子顕微鏡解析までの異なる解像度での解析を同一系統のマウスに施行することにより、回路形成異常を起こした「触覚」神経回路の全容を解明することを目指している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和元年度における研究成果としては、当初の計画通り進めることができ、研究計画(3)~(4)にて実施予定だったRNA結合蛋白質の標的因子群の二次解析を実施し、「触覚」を担う神経回路の形成に異常を引き起こす分子メカニズムの一端を明らかにする研究を実施することができた。
研究計画(3)では標的スクリーニングを行い、標的をランク付けすることに成功し、神経回路の形成に関わる分子群のカタログ入手に成功した。その結果に基づき、研究計画(4)にて実施予定だったWestern blotting法および蛍光多重染色法を用いて、標的の発現細胞および発現量などについて解析を実施することができた。この結果を基に、さらに最終年度である令和2年度には、研究計画(5)~(6)にて予定しているMRIおよび電子顕微鏡の観察に応用し、マクロのMRIから、ミクロの電子顕微鏡解析まで同一系統の個体で実施することで、形成異常を引き起こした「触覚」神経回路を様々な解像度で可視化することができるか検証することによって、最終的に回路網形成異常を起こす異常な「触覚」神経回路の全容を解明する研究を計画通り遂行することができる見通しであることから、おおむね順調に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

令和2年度には申請当初の計画通り、研究計画(5)~(6)にて予定していたMRIおよび電子顕微鏡による神経回路のイメージングを実施する。神経刺激時のマクロのfMRIのデータから、ミクロの電子顕微鏡解析まで同一系統の個体で実施することによって、神経回路の形成異常を起こした「触覚」を担う神経回路の形成状態を様々な解像度から可視化することを目指す。すでに、野生型における予備実験の検証は完了しており、神経回路網の形成異常を起こした異常な「触覚」を担う神経回路を様々な解像度で可視化する研究を計画した通りに遂行するための準備は十分に整っているため、計画通りに実験を実施していきたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

研究は計画通りに順調に進捗し、必要最小限の支出で予定していた実験を完遂することができたが、標的スクリーニングの結果として得られた成果に基づいて購入を予定した抗体などの複数の製品の購入が一部製造停止になっていて入手ができず、類似の別製品を海外から取り寄せるために時間を要し、翌年度で購入することとなったため、次年度に使用額が生じることとなった。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 4件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [国際共同研究] Harvard University/Chicago University(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Harvard University/Chicago University
  • [雑誌論文] YAP-dependent necrosis occurs in early stages of Alzheimer's disease and regulates mouse model pathology.2020

    • 著者名/発表者名
      Tanaka H, Homma H, Fujita K, Kondo K, Yamada S, Jin X, Waragai M, Ohtomo G, Iwata A, Tagawa K, Atsuta N, Katsuno M, Tomita N, Furukawa K, Saito Y, Saito T, Ichise A, Shibata S, Arai H, Saido T, Sudol M, Muramatsu SI, Okano H, Mufson EJ, Sobue G, Murayama S, Okazawa H.
    • 雑誌名

      Nat Commun

      巻: 11(1) ページ: 1-22

    • DOI

      10.1038/s41467-020-14353-6.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] GDNF rescues the fate of neural progenitor grafts by attenuating Notch signals in the injured spinal cord in rodents.2020

    • 著者名/発表者名
      Khazaei M, Ahuja CS, Nakashima H, Nagoshi N, Li L, Wang J, Chio J, Badner A, Seligman D, Ichise A, Shibata S, Fehlings MG
    • 雑誌名

      Sci Transl Med

      巻: 12(525) ページ: 1-14

    • DOI

      10.1126/scitranslmed.aau3538.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Developmental analyses of mouse embryos and adults using a non-overlapping tracing system for all three germ layers.2019

    • 著者名/発表者名
      Serizawa T, Isotani A, Matsumura T, Nakanishi K, Nonaka S, Shibata S, Ikawa M, Okano H.
    • 雑誌名

      Development

      巻: 146(21) ページ: 1-11

    • DOI

      10.1242/dev.174938.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Decreased Activity of the Ghrhr and Gh Promoters Causes Dominantly Inherited GH Deficiency in Humanized GH1 Mouse Models.2019

    • 著者名/発表者名
      Ariyasu D, Kubo E, Higa D, Shibata S, Takaoka Y, Sugimoto M, Imaizumi K, Hasegawa T, Araki K.
    • 雑誌名

      Endocrinology

      巻: 160(11) ページ: 2673-2691

    • DOI

      10.1210/en.2019-00306.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The adeno-associated virus rh10 vector is an effective gene transfer system for chronic spinal cord injury.2019

    • 著者名/発表者名
      Hoshino Y, Nishide K, Nagoshi N, Shibata S, Moritoki N, Kojima K, Tsuji O, Matsumoto M, Kohyama J, Nakamura M, Okano H.
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 9(1) ページ: 1-12

    • DOI

      10.1038/s41598-019-46069-z.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Large-area fluorescence and electron microscopic correlative imaging with multibeam scanning electron microscopy2019

    • 著者名/発表者名
      Shibata S, Iseda T, Mitsuhashi T, Oka A, Shindo T, Moritoki N, Nagai T, Otsubo S, Inoue T, Sasaki E, Akazawa C, Takahashi T, Schalek R, Lichtman JW, Okano H
    • 雑誌名

      Front Neural Circuits

      巻: 13:29 ページ: 1-18

    • DOI

      10.3389/fncir.2019.00029.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] A human induced pluripotent stem cell-derived tissue model of a white matter tract connecting two cerebral regions2019

    • 著者名/発表者名
      Kirihara T, Luo Z, Chow SY, Misawa R, Kawada J, Shibata S, Khoyratee F, Vollette CA, Levi T, Fujii T, Ikeuchi Y
    • 雑誌名

      iScience

      巻: 14 ページ: 301-311

    • DOI

      10.1016/j.isci.2019.03.012.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Large area serial section 3D electron microscope imaging with multi-beam scanning electron microscopy for visualizing neural circuit2020

    • 著者名/発表者名
      芝田 晋介, 信藤 知子, 井原 諒, 伊勢田 太郎, 盛一 伸子, 永井 俊弘, 岡野 栄之
    • 学会等名
      第125回日本解剖学会総会・全国学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] Large area correlative light and electron microscopy imaging with multi-beam scanning electron microscopy for visualizing specific neural circuit2019

    • 著者名/発表者名
      芝田 晋介, 信藤 知子, 井原 諒, 伊勢田 太郎, 盛一 伸子, 永井 俊弘, 岡野 栄之
    • 学会等名
      NEURO2019第42回日本神経科学大会・第62回日本神経化学会大会

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公開日: 2021-01-27  

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