研究実績の概要 |
Adenomatous polyposis coli (APC)は、家族性大腸腺腫症(FAP)の原因遺伝子として発見された大腸癌抑制遺伝子である。APCには、様々なタンパク質が結合する。APCは、それら結合タンパク質との相互作用を通じて、細胞の増加, 分化, 成熟, 移動, 接着, 極性形成に関与することが、培養細胞レベルの研究で明らかとなっている。APCは大腸のみならず脳にも多く発現しているが、脳におけるAPCの機 能はよく分かっていない。 本研究では、癌が発生しない変異APC(APC1638T)を発現するAPC1638Tマウスの海馬神経ネットワークを調べて、海馬神経ネットワーク 形成におけるAPCの機能を明らかにする。 2019年度は、最初に、4%パラホルムアルデヒドで固定した野生型APCマウスとAPC1638Tマウスの脳組織のパラフィン切片(厚さ3μm)を作製した。そして、パラフィン切片を対象とした蛍光免疫染色を行うために、神経細胞の形態観察に用いる神経細胞マーカーMAP2抗体と、APCとAPC結合タンパク質との相互作用を調べるためのAPC抗体, PSD-95抗体, チューブリン抗体の蛍光免疫染色条件(抗原賦活条件, 抗体希釈条件)の検討を行った。検討の結果、各抗体の最適な蛍光免疫染色条件が明らかとなり、野生型APCマウスとAPC1638Tマウスの海馬神経細胞の形態解析を行った。蛍光免疫染色だけの解析では、明確な野生型APCマウスとAPC1638Tマウスの海馬神経細胞の形態の違いは分からなかった。
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