研究課題/領域番号 |
18K14846
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
長谷川 恵美 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 助教 (40765955)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | オレキシン / 睡眠・覚醒 / 報酬系 / ナルコレプシー / 光遺伝学的手法 / マルチユニット記録 |
研究実績の概要 |
本研究では、オレキシンニューロンの下流で睡眠・覚醒の制御および、行動の変容に重要な役割を果たす神経回路の解明を目指すため、自由行動環境下でのin vivoレコーディングやイメージングを新たに導入し、取り組んできた。今年度は、in vivoでの睡眠測定を行いながらマルチユニット記録を行うためのセットアップと条件検討を行った。さらに、ファイバーフォトメトリーを用いたイメージング記録を行うための条件検討にも取り組んでいる。 これまでに、ナルコレプシーに特徴的な2つの症状であるカタプレキシーと睡眠覚醒の分断化が、オレキシンニューロンの直接の下流で機能する2つの異なる神経経路により抑制されていたことを見出している。また、カタプレキシーに関しては、誘発に関与する神経経路も同定しつつある。実験手法として、人為的に神経活動を操作できる光遺伝学的手法を用いている。大変興味深いことに、扁桃体領域にある異なる細胞集団群がカタプレキシーの抑制と誘発にそれぞれ関与していることを見出しつつある。現在は、それらの特定の細胞集団群の同定と電気生理学的特性を観察している。 睡眠覚醒分断化の抑制における青班核・ノルアドレナリン作動性ニューロンの作用部位の探索においては、次の投射領域を同定しつつある。実験方法としては、長時間の作用効果を誘発できる薬理遺伝学的手法を用いている。青班核・ノルアドレナリン作動性ニューロンは、複数の脳領域に軸索を投射しているため、1領域ずつ検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナルコレプシーの特徴的な症状であるカタプレキシーに関しては、誘発に関与している神経経路を同定しつつある。さらに、カタプレキシーを抑制する神経経路と誘発する神経経路の相互的な関係性も見出しつつある。また、ナルコレプシーモデルマウスを用いて、in vivoでの睡眠測定と特定の脳領域おける細胞集団群のマルチユニット記録を行うことに成功している。これらの解析結果より、光遺伝学的手法や薬理遺伝学的手法と組み合わせることも検討している。
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今後の研究の推進方策 |
現在は、カタプレキシー誘発と抑制に大きく関与している扁桃体内の分子メカニズムを詳しく調べている。扁桃体には多くの種類の神経細胞や受容体が存在しているため、組織学的な解析を行っている。睡眠発作の抑制に関与している神経経路の同定においては、順次行っており、ある1つの脳領域を見出せつつあるため、今後より詳細に調べていく予定である。 また、in vivoにおける神経活動を記録する実験系を導入し、ナルコレプシーの特徴的な症状(カタプレキシーと睡眠発作)を神経回路レベルでの異常と行動レベルでの異常を結びつけていきたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
【理由】In vivo実験系を一から立ち上げたため、予定していたよりも多くの時間が必要であったため、実験計画の見直しをせざるを得なくなった。 【使用計画】In vivo実験系を行うために必要な消耗品や試薬の購入を検討している。
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