研究課題
本研究では、行動中の線虫の神経活動の包括的な観測を通じて、塩走性に関わるピルエット機構と風見鶏機構の使い分けについて信号の時間的多重化が利用されているか確かめることを目指す。2018年度は、微小流路下で線虫を保定し、繰り返し刺激を与えながら特定の神経の活動を観察して、塩濃度刺激の情報が神経回路中のどの細胞までどのような態様で届くか調べた。風見鶏行動に深く関わると考えられる神経細胞のうち、塩刺激を受容する感覚神経及び一次・二次介在神経については、首振りの周期と同程度の早い周期に対して応答できることが確認できた。とくに二次介在神経については、刺激に対する神経応答の強さが線虫自身の姿勢と関連している様子が観測された。この現象から、線虫の姿勢に関する自己受容性の情報と環境刺激の情報とが二次介在神経のレベルで統合されている可能性が示唆された。一方、二次介在神経の下流に位置する運動神経については塩刺激依存的な神経活動が確認できなかった。保定下では応答が観察しにくい可能性があるため、線虫が頭部を自由に動かせる微小流路に切り替えて測定を進めている。また頭部全神経の包括的な観測のため、代表者らが所属する研究室に設置されたスピニングディスク型共焦点顕微鏡の整備を進めた。蛍光の漏れ込みや褪色が想定より大きかったため、条件検討を行った。ディスク回転と撮影タイミングの同期をとるための制御プログラムを作成し、定量の精度を向上させることができた。
2: おおむね順調に進展している
繰り返し刺激に対する線虫の神経活動を測定し、姿勢に関する自己受容性の情報と環境刺激の情報とが統合されている可能性のある神経細胞を見出すことができたため。
頭部全神経の包括的な観測のため、代表者らが所属する研究室に設置されたスピニングディスク型共焦点顕微鏡の整備を進める必要がある。また行動中の線虫の単一神経の活動もあわせて観察することで、保定下との神経活動の違いを明らかにすることを検討する。
スピニングディスク型共焦点顕微鏡の整備を進めるために、追加的な条件検討を行った上で装置を購入することが必要になったため。
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http://molecular-ethology.bs.s.u-tokyo.ac.jp/labHP/J/JResearch/