研究課題/領域番号 |
18K14848
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
豊島 有 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (10632341)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | システム生物学 / 機能的全脳イメージング / 神経情報処理 / モデル化とシミュレーション / 線虫 |
研究実績の概要 |
本研究では、行動中の線虫の神経活動の包括的な観測を通じて、塩走性に関わるピルエット機構と風見鶏機構の使い分けについて、信号の時間的多重化が利用されているか確かめることを目指す。 2020年度は、前年度に引き続き、改良した微小流路を用いて、線虫が頭部を自由に振ることができる状態で、塩濃度変化の繰り返し刺激を与えながら神経活動を観察した。予備的ではあるが、塩濃度変化刺激に対して運動神経がわずかに応答している様子を見出すことができた。またこうした応答が線虫自身の自発的な活動状態と非線形的に相互作用して、風見鶏機構に必要な、背腹軸方向の運動の非対称性を生み出している可能性があることがわかった。 こうした応答がどのように頭部の運動と関係しているか明らかにするために、光遺伝学による摂動実験や、数理モデルによる解析等をどのように組み合わせることが効果的か、検討を進めた。また昨年度までに、塩刺激に対する二次介在神経の応答が線虫の姿勢に依存していることを見いだしたが、この現象との関係についても、数理モデルを用いた解析等が可能か検討を進めた。 また既存のスピニングディスク型共焦点顕微鏡に改良を加えることで、自由行動中の線虫の頭部神経の活動を包括的に撮影することに成功した。撮影した立体動画から神経活動を抽出するため、既存の画像処理パイプラインを適用したところ、同一立体中の姿勢の変化が想定より大きく、神経細胞の自動追跡に失敗する場合があることがわかったため、改良法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
自由行動中の線虫の神経活動を包括的に観測するために必要な顕微鏡の開発が遅延したため。またCOVID-19の影響で顕微鏡関連部品のセットアップや実験が一時中断したため。
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今後の研究の推進方策 |
顕微鏡の光学系や解析ソフトウェアの整備を進め、神経活動計測の効率化を進める。また風見鶏機構については、観察された運動神経の塩応答がどのように頭部の運動と関係しているか、光遺伝学的摂動実験を与えて、推測される仮説を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
自由行動中の線虫の神経活動を包括的に観測するために必要な顕微鏡の開発が遅延したため、またCOVID-19に関連して顕微鏡関連部品のセットアップや実験が滞ったため、研究期間延長を申請した。次年度においてスピニングディスク型共焦点顕微鏡に改良を加えるために用いる。
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