研究課題
本研究では、行動中の線虫の神経活動の包括的な観測を通じて、塩走性に関わるピルエット機構と風見鶏機構の使い分けについて、信号の時間的多重化が利用されているか確かめることを目指す。2021年度は、前年度に引き続き、微小流路内に線虫を保定しつつ、線虫が頭部を自由に振ることができる状態で、塩濃度変化の繰り返し刺激を与えながら、頭部筋肉に直接投射している運動神経の活動を観察した。当該運動神経は頭部の運動と同期した活動を示した。また塩濃度変化の繰り返し刺激に対する応答も確認できた。当該運動神経は背側の左右1対と腹側の左右1対の計2対が存在しており、線虫が頭部を背側または腹側へ振る際には背側と腹側の神経対が逆向きに働くと考えられている。しかしChannel rhodopsinを背側神経対または腹側神経対だけに発現させることは難しく、光遺伝学的な方法によって片側の神経対の機能を検証することは難しかった。そこで新たに顕微鏡に追加されたパターン照明装置を活用し、運動中の線虫の腹側のみに光刺激を与えることで、腹側神経対が頭部の動きを実際に制御している様子を確かめた。さらにこれらの要素を加味した数理モデルを作成し、風見鶏行動の特徴が再現できるか検討した。また既存の画像処理パイプラインを用いて、自由行動中の線虫の頭部神経の活動を包括的に撮影した立体動画から神経活動を抽出する過程では、同一立体中の姿勢の変化が想定より大きく、神経細胞の自動追跡に失敗する場合があることが前年度までにわかっていた。2021年度は、同一立体中の姿勢の変化を修正する各種画像解析手法を検討し、実際に神経活動を抽出することに成功した。
3: やや遅れている
研究代表者の独立(転籍)に伴い実験が中断した。またCOVID-19の影響で顕微鏡関連部品のセットアップや実験が一時中断した。
顕微鏡の光学系や解析ソフトウェアの整備を進め、神経活動計測の効率化を進める。
COVID-19に関連して顕微鏡関連部品のセットアップや実験が滞ったため、研究期間延長を申請した。次年度において顕微鏡に改良を加える等のために用いる。
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