研究課題
本研究では、行動中の線虫の神経活動の包括的な観測を通じて、塩走性に関わるピルエット機構と風見鶏機構の使い分けについて、信号の時間的多重化が利用されているか確かめることを目指した。これまでに、微小流路内に線虫を保定しつつ、線虫が頭部を自由に振ることができる実験系を確立し、塩濃度変化の繰り返し刺激を与えながら、神経活動や行動を観察した。頭部の筋肉に直接投射している運動神経の活動は頭部の運動と同期した基礎的な変動を示すことを見出した。また当該運動神経は背側の左右1対と腹側の左右1対の計2対が存在しており、線虫が頭部を背側または腹側へ振る際には背側と腹側の神経対が逆向きに働くと考えられている。しかしChannel rhodopsinを背側神経対または腹側神経対だけに発現させることは難しく、光遺伝学的な方法によって片側の神経対の機能を検証することは難しかった。そこでパターン照明装置を用いて、運動中の線虫の腹側のみに光刺激を与えることで、腹側神経対が頭部の動きを実際に制御している様子を確かめた。本研究期間内を通じて、自由行動中の線虫を自動追尾しながら神経活動を計測できる顕微鏡の開発を進めた。また線虫の姿勢の変化を補正する手法や、画像中の細胞追跡技術の改良を進めた。これらの技術開発・改良によって、塩走性行動中の感覚神経の活動の計測が可能になった。本年度は、前年度までに引き続き、微小流路内に線虫を保定しつつ、線虫が頭部を自由に振ることができる状態で、当該運動神経の活動を観察した。当該運動神経は頭部の運動と同期した基礎的な活動を示すが、この基礎的な活動のうち特定のタイミングで塩濃度刺激に対して応答する様子が確認できた。この仕組みを数理モデルとして実装し、この仕組みによって風見鶏行動を引き起こせるか検討した。
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Neuroscience Research
巻: 186 ページ: 33~42
10.1016/j.neures.2022.10.004
bioRxiv
巻: - ページ: -
10.1101/2022.11.18.517011