研究課題
前年度までにRho-Kinaseの基質として同定したSHANK3について、リン酸化の機能を調べるためSHANK3のリン酸化部位変異体を作成し、ポストシナプスの足場タンパク質DLGAP3との相互作用を解析した。SHANK3のリン酸化部位をアラニンに置換したリン酸化部位欠損変異体(T551A/S694A/S781A)は野生型と比較して、DLGAP3との結合が低下し、リン酸化部位をアスパラギン酸に置換した擬似リン酸化変異体(T551D/S694D/S781D)は野生型と比較して、DLGAP3との結合が増加した。次にRho-KinaseによるSHANK3のリン酸化が学習・記憶に関与するかどうかを検討するため、Cre依存的にSHANK3のSH3-PDZ領域(DN変異体)を発現するアデノ随伴ウイルス(AAV)をAdora2a-Creマウスの側坐核に注入することにより,ドーパミンD2受容体を発現する中型有棘神経細胞(D2R-MSN)においてSHANK3の機能を抑制するマウスを作製し、受動回避学習試験を行った。野生型マウスと比較してSHANK3のSH3-PDZ領域(DN変異体)を発現するマウスでは学習・記憶能力が低下した。一方、SH3-PDZ領域内のリン酸化部位をアラニンに置換したリン酸化部位欠損変異体(T551A/S694A/S781A)では学習・記憶能力の低下は認められなかった。また、受動回避学習試験において、電気ショック訓練後のマウスの側坐核を採取し、SHANK3のリン酸化レベルをウェスタンブロットにて解析したところ、電気ショック負荷により側坐核におけるSHANK3のリン酸化レベルが有意に上昇した。以上の結果より、Rho-KinaseによるSHANK3のリン酸化がシナプス関連タンパク質との相互作用を調節することで、シナプス機能を制御し、学習・記憶に寄与することが示唆された。
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Journal of Neurochemistry
巻: - ページ: -
10.1111/jnc.15303
http://www.fujita-hu.ac.jp/ICMS/research_category/res06-22054/index.html