研究代表者は、これまでに脳弓下器官(SFO)において水分摂取を指令するニューロン(水ニューロン)を同定するとともに、塩欠乏時においてSFOに分泌されるコレシストキニン(CCK)が抑制性ニューロンを活性化することで、水ニューロンの活動を抑制することを明らかにした。本研究では、SFOにおいてCCKを分泌する細胞の同定およびその分泌制御機構の解明を目的にしている。 昨年度において、研究代表者は、SFO 自体にCCK 産生ニューロンが存在することを明らかにした。また、光遺伝学的手法を用いてSFOのCCK産生ニューロンを人為的に活性化させたマウスにおいて脱水時の水分摂取行動が抑制されることを確認していた。 本年度では、in vivoカルシウムイメージング法によりCCK産生ニューロンの神経活動を生理的条件下で観察した。その結果、SFOのCCK産生ニューロンには体液状態に応じて活動するグループと飲水行動に応じて活動するグループの2つのグループが存在することを発見した。このことから、SFOのそれぞれのCCK産生ニューロンは、水ニューロンの活動を体液状態に応じて抑制する役割と飲水行動に応じて抑制する役割を担っていることが示唆された。これにより、体液状態や実際の飲水行動の情報をフィードバックして適切な飲水行動を誘導するための仕組みを明らかにすることが出来た。本研究成果は、現在、論文発表の準備を進めている。 また、本研究計画では第二に、水ニューロンからのシグナルを受容する下流のニューロン(二次水ニューロン)を同定することを目的としていた。この目的を達成するため、ウイルスが感染した神経細胞から下流の神経細胞に目的遺伝子を発現させるトランスシナプス標識法を確立し、二次水ニューロンを標識することに成功した。現在、この二次水ニューロンについて詳細な解析を進めている。
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