本年度は申請書に記載したデジタルマイクロミラーデバイスを用いた光刺激系の確立を中心に実験を進めた。デジタルマイクロミラーによる1光子励起では光の散乱により深度へと光刺激を到達させることが難しく、2/3層の神経細胞を対象として神経活動の操作を行った。更に同時に神経活動を記録することで、予期せず一次視覚野の視覚刺激の表象が可塑的に変化することを発見し、日本神経科学会を含む複数の学会で報告した(論文投稿準備中)。 一方で、学習課題を学習済みのマウス個体から、課題中の神経活動を2光子カルシウムイメージングにより計測する系を確立し、データを取得した。この際、同時にeye tracking、行動のビデオ記録も行っており、サッケードやcorollary dischargeに対応する神経活動の同定を可能にした。データ解析用のPython及びMATLABのプログラムも実装を行い、すべてのデータが公開可能なようにNeurodata without border (NWB)フォーマットで前処理を行っている。 一方で、当初の予定であった文脈依存的な意思決定課題については、学習が難しく効率よく学習済み個体を用意することが容易ではないこと、競合する海外の研究チームからすでに似た課題が報告されていることから予定を変更を余儀なくされ、現在は学習過程に注目した別の課題を中心に訓練を行っている。
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