研究課題/領域番号 |
18K14863
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中島 誠也 千葉大学, 大学院薬学研究院, 助教 (70802677)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 超原子価ヨウ素 / 可視光励起 |
研究実績の概要 |
本研究は、可視光をエネルギー源とする超原子価ヨウ素のデザインと合成、それを用いる新規反応の開発を目的としている。以下に当該年度における研究実績の概要を記載する。 可視光を吸収可能な超原子価ヨウ素化合物のデザインを計算科学を用いて行った。その結果、アクリジン骨格を有する超原子価ヨウ素やアントラセン骨格を有する超原子価ヨウ素が可視光部位に九州波長を持つことが予測された。 デザインした超原子価ヨウ素の合成を行った。アクリジンタイプ及びアントラセンタイプのどちらの超原子価ヨウ素も市販の化合物より数工程で合成することに成功し、X栓結晶構造解析により構造の証明に至った。合成した超原子価ヨウ素は実際に可視光を吸収することが分光測定より明らかとなった。 合成した超原子価ヨウ素に可視光を照射し、酸化反応の検討を行ったところ、非照射下では進行しない反応が有意に進行した。様々な基質において本反応は進行し、可視光をエネルギー源として化学反応を進行させていることが明らかとなった。さらに、本反応の反応機構を明らかにすべく、分光的な特性を調査した結果、通常の光反応とは異なる機構で反応が進行していることが明らかとなった。さらにその反応機構を計算科学を用いて証明することにも成功した。その機構は他の超原子価ヨウ素でも同様に進行することが明らかとなり、さらに、超原子価ヨウ素以外の様々な分子でも進行することが順次明らかとなった。 上記の研究内容を現在、学術論文として投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在までに、目的のほとんどを達成するに至っている。すなわち、計算化学による可視光を吸収する超原子価ヨウ素のデザイン、実際の合成、吸収波長の実測、可視光照射下での反応開発、反応機構の分光的及び計算的証明に成功している。 計算による分子デザインでは200種以上の分子をデザインし、その結果約20種の分子が可視光を吸収すると予測された。実際にそのうちの2種の合成を行ったところ、市販の化合物より数工程で合成が可能であった。合成した超原子価ヨウ素は計算通りの吸収波長を有していることが実測から明らかとなった。それらを用いる反応では、可視光照射したときのみ特異的に反応が進行することが明らかとなり、可視光をエネルギー源として用いていることが証明された。さらに詳細な反応機構の解明を分光的、計算的に行い、反応機構の完全解明に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策に関して、現在、さらなる分子デザイン、合成を行っている。次年度内にさらに長波長な光を吸収可能な分子を合成する予定である。 現在までに合成した可視光活性型超原子価ヨウ素の吸収領域は青色すなわち450nmまでである。そこでそれよりも更に長波長な領域に吸収波長を有する超原子価ヨウ素の合成に取り組む。具体的には、色素として用いられる骨格にヨウ素の導入、超原子化を行うことで上記の目標を達成する。最終的には近赤外光をエネルギー源とする分子のデザイン、合成、物性評価を行いたい。
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