研究実績の概要 |
本研究では生体分子の化学修飾への応用を志向した新規光反応基の開発を行った。 代表者は2018年度までにアミノシクロプロペノンの光照射により高反応性のイナミンを発生させ、脱水縮合反応、及びケトン形成を行う新規反応の開発に成功した。それらの経験に基づき、シクロプロペノン構造、反応条件の検討によって、より有用な光反応の開発に取り組んだ。 シクロプロペノンからアルキンを発生させる反応は、これまで紫外光を用いる条件が中心であり、紫外光に弱い基質の共存が困難であるという欠点があった。代表者は可視光を吸収する適切な光触媒を探索し、より穏和な可視光条件でシクロプロペノンからアルキンを発生させることに成功し、更に、系中で発生させたアルキンを用いて化学反応を行うことに成功した。本反応を利用することで、従来の紫外光を用いる条件では分解してしまう基質の共存下でも、望まない分解反応を起こさず選択的にシクロプロペノンから高反応性アルキンを生成することに成功した。 本成果は国際誌Organic Letters 2019, 21, 4101-4105.にて論文発表を行った。本成果に関して国際学会ICPAC2019にて招待講演を行い、月刊機能材料2020年4月号に寄稿記事執筆を行った。 以上の成果は新規光化学反応の開発という観点から有機化学分野の発展に貢献すると共に、生体分子の化学修飾等への応用へも期待できるものであり、今後もこれらの成果をより発展させていく。
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