研究課題
若手研究
正常細胞にはみられない、がん細胞特異的な微小環境下で、選択的にがん細胞の増殖を阻害すると期待される天然物DC1149B、及びその類縁体について迅速かつ網羅的な合成研究に取り組み、生物活性発現に必須な化学構造の解明を目指した。その結果、独自に開発した一重項酸素を用いる脱芳香環化/oxy-MIchael付加のタンデム反応を基盤とし、トリコデルマミド系天然物三種の不斉合成を達成した。また、DC1149Bにおいてはその化学構造と低栄養環境選択的がん細胞増殖阻害活性の相関についても重要な知見を得るに至った。
天然物化学
本課題では、DC1149Bおよび類縁化合物の網羅的合成研究に取り組んだ。その結果、共通重要骨格である光学活性なcis-1,2-オキサザデカリンエノンの効率的な新規構築法を開発した。また、本手法を基盤として、トリコデルマミドD,E及びFの統一的な初の不斉合成を達成した。本化合物群は副作用の少ない抗がん剤のリード化合物への可能性を秘めていることから、今回得られた成果は合成化学及び創薬化学の両領域への大きな波及効果が期待できる。