研究課題/領域番号 |
18K14871
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
山口 英士 岐阜薬科大学, 薬学部, 講師 (10737993)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 有機金属錯体 / ニッケル / Grignard反応 / 還元的カップリング |
研究実績の概要 |
Grignard試薬は発見以来一世紀以上利用されている高反応性の試薬である。高い反応性に由来し様々な制限があるが、代替法がない唯一の反応剤として地位を確立している。本研究では、ニッケル錯体を利用する触媒的な求核性化学種の発生方法の解明と反応性を明らかにし、その反応性を基軸とした分子変換反応への応用を目指し、以下の検討をした。 (1) 有機ハロゲン化物から求核性化学種を触媒的に生成可能な触媒系の探索 種々検討をした結果、ニッケル触媒に対しジイミン系の配位子を添加することで、目的の反応が進行することが明らかになった。一方で、リン系の配位子では、イミン系配位子とは異なり目的の反応が全く進行しないことも同様に明らかになった。 (2) ニッケル触媒を利用するGrignard型の付加反応を実現可能な反応条件の解明 反応条件の最適化研究から、パラメーターや添加剤の精査をすることで、還元剤として亜鉛を用いること、アミンと酸を組み合わせて添加をすること、溶媒は無極性溶媒を用いることが効果的であることが明らかになった。また、量論実験の結果から反応は0価2価の触媒サイクルを経ていないことが同様に明らかになった。 これらの結果に加えて基質適用限界の解明研究、次年度に予定していた不斉反応への応用研究の一部をすでに遂行しており、そのどれも予定以上の結果を得ている。それゆえ今年度実施した研究は比較的良好に進行していると判断した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上述したよう、初年度の計画どおりに研究は進行しいる。 特に(1) 有機ハロゲン化物から求核性化学種を触媒的に生成可能な触媒系の探索と(2) ニッケル触媒を利用するGrignard型の付加反応を実現可能な反応条件の解明研究において直接触媒サイクルに関与する事象を明らかにすることができている。 また、これらの結果に加えて基質適用限界の解明研究、次年度に予定していた不斉反応への応用研究の一部をすでに遂行しており、そのどれも予定以上の結果を得ている。それゆえ今年度実施した研究は比較的良好に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当該研究が概ね順調に進行しているため、次年度では研究計画書にあるよう以下の事柄について研究を遂行する。 (3) 以下の速度論解析、各種コントロール実験により反応機構を明らかにする。a.競争実験を行い、アリールハライド/アルデヒドの置換基の電子的影響を競争実験により系統的に明らかにし、基質の電子的影響と反応速度との相関を解明することで、実際に錯体上の電子的に陰性な炭素原子が求核的に作用しているのかを解明する。b.重水素化実験を以下のように行う。アルデヒドのカルボニル水素をD化し、速度論的同位体効果を測定する。錯体上の炭素原子が求核的に作用する場合は、二次の速度論的同位体効果によりkH/kD<1となることが予想される。また、反応機構にカルボニルの水素への酸化的付加が含まれる場合は、kH/kD>3となる。これらの知見からも錯体上の炭素原子の挙動を予想する。 (4) ニッケル触媒による不斉炭素-炭素結合形成反応を達成可能な反応場の構築をめざす。すでに、初年度の検討の中で、キラルな配位子を利用することでエナンチオ選択性が発現することがわかっているため、これをもとに様々な配位子を用い検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
DFT計算用のガウシアンを購入予定であったが、別の予算で購入したためその分の予算を翌年に計上し迅速に研究計画を遂行する予定である。
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