研究課題/領域番号 |
18K14875
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
小澤 新一郎 北里大学, 薬学部, 助教 (20724868)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | インシリコ・フラグメントマッピング / インシリコ・スクリーニング / フラグメントベース創薬 / PPI阻害剤 |
研究実績の概要 |
本年度は、まずは当研究室で開発したインシリコ・フラグメントマッピング法をタンパク質-タンパク質間相互作用(PPI)界面に適用することの妥当性の検証を目的として、高親和性リガンドとの複合体結晶構造が報告されているPPI標的タンパク質であるSTAT3, Interleukin-2およびBcl-xLに対してインシリコ・フラグメントマッピングを行った。得られたフラグメントを結晶構造中の結合リガンドと比較したところ、同一または類似した部分構造が多く存在した。したがって、本手法を用いることでPPI界面に結合する可能性の高いフラグメントを正しく同定できると結論した。また、得られたフラグメント群の中には、結合リガンド上の対応する部分構造とは構造/性質が大きく異なるものも存在した。これらフラグメントを用いて分子設計やインシリコ・スクリーニングを行うことにより、既知リガンドとは異なる分子骨格を有するリガンド/阻害剤を設計できると予想される。 これらと並行して、タンパク質同士が広い界面で相互作用する創薬難易度の高いPPI界面に対して、インシリコ・フラグメントマッピング法を用いたインシリコ・スクリーニングを実施した。標的としては、その重要性に反してPPI阻害剤の開発が立ち遅れているRac1タンパク質(GEFとの相互作用界面)およびインフルエンザRNAポリメラーゼ(サブユニット間相互作用界面)を用いた。それらのうちRac1については、既知阻害剤より一桁程度阻害活性(IC50値)が弱いものの、GEFとの相互作用を阻害する有望な化合物を同定することに現時点で成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、インシリコ・フラグメントマッピング法をPPI標的に適用することの妥当性を実証するとともに、本手法を用いて実際にPPI阻害剤の候補化合物を同定することまで成功した。フラグメントマッピングおよびインシリコ・スクリーニングの適用例をさらに増やしてマッピングおよびスクリーニングのワークフローを確立する必要はあるものの、単年度の成果としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
インシリコ・フラグメントマッピングの適用例を増やすことで、本手法適用の妥当性に関する知見を補強する。また、既知のインシリコ・フラグメントベース創薬手法と本手法の性能比較を行う。これらの結果に基づいて、本手法を用いたインシリコ・フラグメントベース創薬の特徴づけやワークフローの確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
計算結果を記録するメディアや大規模計算を補助するPC等を購入したが、化合物購入費用等が想定よりもわずかで済んだため、次年度使用額が生じた。次年度の化合物購入費用や研究成果の学会発表費用の一部とする。
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