研究実績の概要 |
ペプチドミメティクスとライゲーション反応の著しい発展に伴って,タンパク質エンジニアリングにおける精密有機合成化学の担う役割はますます大きなものになっている.各種ペプチドミメティクス単量体の中でも,β2-及びβ2,2-アミノ酸は,位置異性体であるβ3-アミノ酸と異なり対応するα-アミノ酸からの誘導が不可能であるため,多数の特長を有しながらも汎用されていない.本研究課題では容易に入手可能なイソキサゾリジンー5ーオンをβ-アミノ酸等価体として設定し,その多彩な反応性を活かすことで,上記合成素子の効率的な合成法開発を目指している.
2018年度は大きく2つの進展があった.以前までの報告ではイソキサゾリジンー5ーオンを事前に修飾し,不斉反応の基質とすることで高い不斉収率にて所望のアミノ酸類を取得していた.本年度は,この事前修飾を回避してCH結合を直接官能基化する触媒条件を見出すに至った.この成果により同様の条件下,反応剤を変えるのみでさまざまなβ2,2-アミノ酸の合成が可能であることを示すことができた.
もう1つの進展は基質の変換法に関するものである.これまでは反応成績体中のNO結合を,外部より化学量論量の還元剤を添加することにより切断していた.今年度はNO結合の切断を,分子内芳香族のCH結合の酸化と組み合わせることでレドックスニュートラルな分子変換を実現することができた.これによりこれまで合成例のほとんど存在しない環状β-アミノ酸類の効率的な合成法を開発することができた.
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