研究課題/領域番号 |
18K14880
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
三澤 隆史 国立医薬品食品衛生研究所, 有機化学部, 室長 (40709820)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 細胞膜透過性ペプチド / ヘリカル構造 / 核酸デリバリー |
研究実績の概要 |
オリゴアルギニン(Rn)に代表される膜透過性ペプチド(CPPs)は生体高分子などの親水性分子を細胞内に導入するキャリア分子として注目を集めている。しかし、生体内安定性や細胞選択性に乏しいなど生体応用を目指した場合、多くの問題点が残されている。これまでに、当研究室ではCPPsの二次構造が膜透過能に与える効果を検討し、ヘリカル構造が膜透過能に有利に働くことを見出している。一方で、ロイシンやa,a-ジ置換アミノ酸からなる短鎖ペプチドが安定なヘリカル構造を形成することを報告した。そこで、これらをヘリカルプロモータ配列としてCPPsに連結させることで、CPPsのヘリカル構造を誘起し、さらには膜透過能を向上させることができると考えた。また、ヘリカルプロモータ配列上にアジド基を導入することで、生体内安定性を向上させるPEG基や、特定のオルガネラ選択的に集積させるシグナル配列などを修飾することで上記の問題点克服を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当研究室が見出した安定なヘリカル構造を形成するペプチド(Leu-Leu-Aib)n (1)を代表的な細胞膜透過性ペプチドであるオリゴアルギニンに連結したBlockペプチドをデザイン・合成した。CDスペクトルにより、Blockペプチドは水溶液においても安定なヘリカル構造を形成していることを明らかにした。また、Blockペプチドを用いた細胞内への核酸デリバリー実験を行い、Blockペプチドは効率的にsiRNAを細胞内に導入し、標的タンパク質の発現量を有意に現象させることを見出した。また、デリバリー効果におけるメカニズム解析を行い、Blockペプチドは核酸分子と複合体を形成し、エンドサイトーシス された後にエンドソームから脱出することを明らかにした。Blockペプチドは疾患に関与する変異型KRASに対してもsiRNAデリバリーによる発現量減少を誘導し、その細胞増殖を抑制可能であることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに効率的に細胞内に遺伝子を導入可能なBlockペプチドの開発に成功した。今後は得られたBlockペプチドの構造修飾を行うことで、様々な生体高分子の細胞内デリバリーに応用できることを示す。また、細胞内のオルガネラや臓器への選択性の付与を目指し、さらなる活性の向上、クリック反応を利用した臓器、組織、オルガネラ選択性の検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでに優れた細胞膜透過性を示し、効率的に核酸分子を細胞内にデリバリー可能なBlockペプチドの開発に成功した。現在、Blockペプチドを利用した組織選択性等に関する検討を行っており、延長することで本研究課題が大きく発展する可能性がある。そのため、延長を希望する。延長した金額については、ペプチド誘導体の合成やマウス等を用いた検討に使用する予定である。
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