研究課題/領域番号 |
18K14881
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松本 洋太郎 東北大学, 薬学研究科, 講師 (90420041)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | サイクリックADPリボース / ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド / 安定同位体 / 定量系 / ターゲットメタボロミクス |
研究実績の概要 |
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)主要代謝物であるサイクリックADPリボース(cADPR)は、オキシトシン放出、 インスリン分泌や、炎症反応、さらには幹細胞の自己複製など、様々な生命現象との関わりが指摘されている重要なメッセンジャー分子である。本研究は、これまでのメタボローム研究において極微量であるために定量できていなかった細胞内cADPRに焦点を当て、LC/MSを用いたcADPRの高感度精密定量法の構築を主目的とする。本研究では、内部標準物質としてcADPRの同位体合成を行い、併せてNAD関連代謝物の同位体を合成することで、本cADPR定量法を基盤とするNAD関連代謝物質の一斉定量法に展開する。初年度は定量系構築に必要な内部標準物質であるcADPRの安定同位体の全合成を計画していたが、合成が予想以上に難航したため、当初の計画よりやや遅れている。原因は中間体の安定性と精製方法であったが、初年度の検討で適切な反応条件や精製方法が概ね明らかとなった。合成の進捗状況としては、NADおよびcADPRを合成するための合成中間体であるニコチンアミドやアデノシン、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、アデノシン一リン酸(AMP)の安定同位体を合成することが出来た。次年度は全合成を達成させるとともに、これら中間体を内部標準物質として用いることで高精度なNAD関連代謝物質の一斉定量法に展開する予定である。本研究課題によって、NADメタボロミクス研究に新たな評価系を提案することで種々の疾患機序、および薬の詳細な作用機序解明に貢献したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
合成が予想以上に難航したため、当初の計画よりやや遅れている。理由は中間体の安定性と精製方法であったが、初年度の検討で適切な反応条件や精製方法が概ね明らかとなった。これらの検討結果に基づいた合成法により、次年度で合成が達成出来る見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
cADPRの安定同位体合成過程において、中間体の精製に時間を要していたが、初年度の検討で概ね問題は解決しており、早期に高純度の安定同位体標品を合成出来る見込みである。 次年度も引き続き合成を行うことにはなるが、当初予定していた分離分析条件の検討は初年度に並行して進めていたため、安定同位体が合成・精製出来次第、分析バリデーションを行う準備が出来ている。またNAD関連代謝物質の一斉定量法に向けた分離条件およびMS検出最適化も初年度から進めており、当初の計画通りcADPR精密定量法の確立とNADメタボロミクス手法の開発を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に計画していた合成が遅れたため、当初予定していた分析バリデーションに必要な物品(分析カラム等)の購入が次年度に変更となった。所望の安定同位体の合成が出来次第、分析カラム等の消耗品を購入し、分析バリデーションを行う計画である。
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