研究課題/領域番号 |
18K14884
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松岡 悠太 九州大学, 薬学研究院, 助教 (20783509)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 脂質 / 質量分析 / 脂質過酸化反応 / アルデヒド |
研究実績の概要 |
脂質は、活性酸素種などの酸化物質により容易に酸化される。この際、脂質分子内の脂肪酸アシル部位が断片化され、数多くのアルデヒド化合物が生成する。これらは、タンパク質の化学修飾や炎症反応を引き起こし、様々な疾患発症に関与することから、新たな疾患バイオマーカーとして期待される。しかしながら、脂質由来アルデヒド化合物は複雑かつ多彩な反応機構を経て生成するため、その構造情報が不足しており、未だ適切な解析法が確立していない。一方、近年我々は、ニトロキシド化合物のラジカル捕捉能を応用し、脂質断片化時においてアルデヒド化合物と同時に生成する脂質由来ラジカル種の構造解析に成功した。そこで、この際に観測されたラジカル種の構造情報ならびに生成機構より、アルデヒド化合物化学構造を推測できるのではないかと考えた。以上より、本研究では脂質過酸化反応にて生じる脂質由来アルデヒド化合物の構造推測およびHigh-performance liquid chromatography and high-resolution tandem mass spectrometry (LC/HRMS/MS)を用いた構造解析・データベースの構築を行い、さらに生体試料中アルデヒドの包括的解析を目指した。 本年度では、脂肪酸アシル部位に様々な多価不飽和脂肪酸を有するPhosphatidylcholine (PC)に対して、種々の酸化反応開始剤を添加し生成させたアルデヒドの解析を進めた。それぞれの酸化機構より生じるアルデヒド化合物の化学構造を推測し、LC/HRMS/MSにより解析したところ、百種類を超える脂質断片化アルデヒド化合物の検出に成功した。また、そのほとんどはこれまでに報告例のない化学種であった。今後、本解析法・データベースを疾患モデル動物へと応用することで新たな疾患バイオマーカー候補分子の探索を目指していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の本年度達成目標の通り、様々な生成機構より生成する脂質アルデヒド構造を推測し、LC/HRMS/MS解析を実施することで、実に百種類を超えるアルデヒドの同定並びにデータベース化に成功している。また、本研究にて同定された脂質アルデヒドのほとんどは、これまでに報告例のない化合物であったことから、今後、より体系的な脂質アルデヒド解析が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
開発した新規技術を用い、動脈硬化症や肝疾患、神経変性疾患など種々の酸化ストレス性疾患モデル動物において生成する脂質アルデヒドの体系的評価を行う。そして、得られた知見より、酸化ストレス疾患発症時における各脂質酸化物の役割を明らかとするともに、バイオマーカー候補化合物の探索を行う。
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