研究課題/領域番号 |
18K14888
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
竹内 一成 東京理科大学, 薬学部薬学科, 講師 (10734931)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 経皮DDS / PLGA / PEG / ナノ粒子 / 乾癬 / シクロスポリンA |
研究実績の概要 |
平成30年度は、真皮および皮下組織までナノ粒子を送達するための PLGA-PEG を基材とする疎水性モデル薬物および蛍光物質含有ナノ粒子の調製実験を行った。溶質の溶媒に対する溶解度の差異を利用することで貧溶媒中において粒子を形成させる Nanoprecipitation 法と良溶媒と溶質の相互作用を利用することで粒子の分散安定性を向上させる選択溶媒和法を併用することで、平均粒子径 30-70 nm程度のナノ粒子の調製を目指し、乾癬治療薬である Cyclosporine A を含有させた平均粒子径 30.1 nm の PLGA-PEG-PLGA ナノ粒子の調製に成功した。このときの薬物含有率は 3.3% であった。X線光電子分光法による測定結果から、本ナノ粒子は表面に親水性の PEG が露出しているミセル型ではなく、粒子全体にPEGが均一に分布していることが明らかとなった。また、皮膚透過経路観察用の蛍光物質であるクマリン 6 を含有させた Cyclosporine A 含有 PLGA-PEG-PLGA ナノ粒子の調製にも成功した。同等の平均粒子径および放出挙動を持つ PLGA ナノ粒子を調製し、乾癬モデルマウスを用いた ex vitro 皮内薬物貯留試験を行った。Franz cell を用いた Cyclosporine A 皮内貯留量の測定実験の結果から、従来の PLGA ナノ粒子に比べ PEG-PLGA ナノ粒子では、乾癬皮膚における薬物貯留量が有意に増大することが確認された。この結果から、皮膚真皮層での薬物拡散においては、PLGA ナノ粒子よりも PEG-PLGA ナノ粒子の方が有用である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成30年度は、計画していた疎水性モデル薬物および蛍光物質含有 PLGA-PEG-PLGA ナノ粒子の調製を達成した。ナノ粒子中の物性測定も順調に進行しており、皮膚真皮および皮下組織への送達を目的としたナノ粒子製剤の基礎的な部分が完成したと考えている。最終的なナノ粒子製剤の有用性は疾患モデル動物を用いた治療実験により行うことを計画しているが、乾癬モデルマウスの作製の目処が立ったことで、来年度以降にこれを用いて予定していた ex vivo 実験の一部が実施可能となり、その研究成果を学会年会およびシンポジウムで発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、乾癬モデルマウスを用いた ex vivo および in vivo 実験を中心に行う。乾癬モデルマウスの皮膚を用いた、蛍光物質含有 PLGA-PEG-PLGA ナノ粒子によるナノ粒子の皮膚透過経路観察は、共焦点レーザー顕微鏡を用いて行う。また、ナノ粒子化が薬効に与える影響に関して、ヒト表皮角化細胞を用いて評価する。加えて、毛包や角質層への薬物送達性を評価するために、ex vivo 皮膚貯留試験後の皮内薬物濃度を、角質層、毛包、真皮および皮下組織に分けて測定することを目指す。各々の実験において、結果は PLGA ナノ粒子を用いた場合の実験結果と比較検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、ナノ粒子製剤調製実験が順調に進み、試行回数を抑えられたために生じた。これは次年度の動物を用いた実験に使用する予定である。
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