研究課題/領域番号 |
18K14889
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研究機関 | 新潟薬科大学 |
研究代表者 |
城田 起郎 新潟薬科大学, 薬学部, 助手 (20714900)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | MALDI / 真空紫外光 / ソフトイオン化 / 飛行時間型質量分析法 |
研究実績の概要 |
本年度は、主に以下の3項目について研究を実施した。 (1)シート状ナノ秒紫外レーザー光を用いたMALDIイオンパケットの伝搬追跡:MALDI法を用いた試料検出感度の向上を目指す上で、MALDI結晶への紫外レーザー照射後にマトリックス剤CHCAから生成するプロトン化CHCAの時空間分布を把握することが必要であるとの判断から、シート状ナノ秒紫外レーザーを用いてプロトン化CHCAイオンパケットの伝搬を追跡した。観測データの解析により、プロトン化CHCAイオンパケットの中心部は、MALDI結晶への紫外レーザー照射後45ns以内に放出されることがわかった。この成果ついては論文投稿し外部に広く発信した。【Mass Spectrom (Tokyo) 2018; 7(1): A0071】(2)VUV光発生用チェンバーの製作および既設MALDI-MS装置の改良:まず、VUV光発生用チェンバーを製作し既設MALDI-MS装置に組み込んだ。次にTOFのメインチェンバー部に設置したパルスノズルから導入したベンゼンの分子線にVUV光発生用チェンバーより発生したレーザー光を照射したところ、ベンゼンの断片化を抑えて分子イオン信号が観測されたことからVUV光の発生が確認できた。この信号を用いて、VUVチェンバー内の(Xe+Ar)ガスの圧力を最適化した。また、VUV光検出器を製作し、あわせてVUV光の発生を確認した。また、MALDI結晶全体をある程度均一に脱離させる為、試料プレートを回転できるよう既設MALDI-MS装置を改良した。(3)VUV光を用いたMALDIプルーム内中性分子種のイオン化検出:紫外レーザー光照射によりCHCA結晶から発生したプルームへVUV光を照射したところ、CHCAの分子イオン信号が観測され、MALDIプルーム内中性分子種の断片化を抑えたイオン化検出が可能であることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)及び(2)の項目により、おおむね当初の予定通りに研究を遂行できた。また、当初、次年度に行う予定であった(3)の項目の一部についても遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、申請内容の計画に従い、以下のように遂行していく予定である。 まず(1)VUV光の照射位置を正確に把握するための基礎データを取得する。次に、(2)前年度に対象としたCHCAに加えて、試料/CHCA混合結晶やCHCA以外のマトリックス剤を用いた系についても、VUV光を用いてこれらの系から発生したMALDIプルーム内中性分子種のイオン化検出を試みる。その際、VUV光由来の信号が最も強くなるよう脱離レーザー光とVUVレーザー光間の照射タイミングを最適化する。(3)(2)で得られたデータを基に、脱離レーザーのみで得られる通常のMALDI信号であるプロトン化試料の信号強度と最適化したVUV光をMALDIプルーム内中性分子種に照射し得られた試料由来の信号強度を比較することで、VUV光照射によりMALDIプルーム内中性分子種をイオン化検出する手法による、試料検出感度の検証を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題の遂行途中で、MALDI用レーザー光源として使用していたQuanta-Ray GCR-3(Spectra-Physics社製) が、経年劣化の為レーザー発振できなくなり、一時的に研究を遂行できない状況になった。これに対処する為、研究費の使用計画を大幅に見直し、本研究室の既設紫外レーザーQuanta-Ray INDI(Spectra-Physics社製)にTHG結晶を組み込む費用を捻出することで、MALDI用レーザー光源を新たに確保し、研究を再開することができた。この結果、本研究課題の進捗状況に影響は無かったものの、繰越金が発生した。この繰越金は、翌年度分と合わせて、マトリックス剤、試料、光学部品等の購入に使用する。
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