昨年度までに検討してきた機械的処理による薬物結晶の乾式造粒・球形化は,乾式複合化装置を用いて実施してきた.しかし,この装置は製薬産業での適用が限られていることから,医薬品製造で汎用される高速攪拌造粒機を用いた機械的手法による薬物結晶の造粒・球形化を新たに検討した.アセトアミノフェン(AAP)結晶を高速攪拌造粒機に仕込み,インペラー速度2000rpmで処理したところ,薬物結晶の粒子径および形状に大きな変化は生じなかった.従来使用していた乾式複合化装置においては,薬物結晶は機械的ストレスによって破壊されるとともに,生じた比較的大きな結晶片に微粉末が被覆造粒することで,造粒・球形化した.高速攪拌造粒機は乾式複合化装置より試料結晶に与える機械的ストレス化が弱いことから,造粒効率を高める目的で添加剤球形顆粒を担体として追加し,AAP結晶と共に混合処理に供した.インペラー速度500rpmにおいては,担体粒子と薬物結晶は分離して造粒しなかったが,インペラー速度を上げるにつれて,担体粒子表面にAAP粒子が付着・積層し,薬物球形複合粒子が得られた.2000rpmの攪拌混合処理において,最初に投入したAAP結晶の80%以上が担体粒子に積層することを示した.担体粒子と混合処理したAAPの粒子径をガス吸着法により測定した比表面積より算出したところ,インペラー速度を上げるにつれて,AAP結晶の粒子径は低下し,2000rpmではサブミクロンサイズまで小さくなることを示した.さらに,AAPの粒子径と担体粒子への被覆量は相関していたため,AAP結晶は攪拌混合処理によって担体粒子と衝突することで微細化され,担体粒子に積層することを示した.これらの結果より,乾式複合化装置の代わりに高速攪拌造粒機を用いて,溶媒を使用しない機械的混合処理によって,薬物結晶を造粒・球形化できることを示した.
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