研究課題/領域番号 |
18K14891
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
小西 敦子 京都薬科大学, 薬学部, 助手 (20634330)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | センサー / ゲル / 分子インプリントポリマー / イオン液体 |
研究実績の概要 |
本研究は、生体内微量成分の検出において、患者への負担が少なく簡便でリアルタイムな測定を可能にする、現在の検出法の課題を解決する方法を開発するための基盤研究です。つまり電気を通しやすいイオン液体を含有したゲルに人工抗体とも呼ばれる分子インプリントポリマー(MIP)を組み込んだ、分子認識と信号変換部一体型の分子鋳型イオン液体ゲルセンサーの開発を目的として、その基盤となるコルチゾール(COR)イオン液体ゲルセンサーの確立をおこなっています。 2019年度には、2018年度に確立した親水性イオン液体を用いたCORイオン液体ゲル(COR-IG)の定量性能を評価するため、様々な濃度のCORに対するCOR-IGの吸着量を紫外可視吸光光度法により測定したところ、COR濃度の上昇に伴い吸着量が増大する傾向が見られ、定量性能を有する可能性が示唆されました。 次に、親水性イオン液体は、吸着量測定等を含む各調製、測定段階において、ゲルから水溶液中へ漏出してしまっている可能性が示唆されたため、疎水性イオン液体を用いたCOR-IGの作製を試みました。その結果、ドデシル硫酸ナトリウムの添加や、作製時の溶媒としてのジメチルスルホキシド(DMSO)の増加といった工夫を加えることで、疎水性イオン液体を用いても無色透明で均一なCOR-IGを作製することができました。さらに、疎水性イオン液体としてN-Buthyl-N-methylpyrrolidinium bis(trifluoromethanesulfonyl) imideを用い、DMSO増加で作製したCOR-IGに対するCORの吸着量は、上述する親水性イオン液体COR-IGに対するCORの吸着量とほぼ等しく、CORを認識するCOR-IGであることが示されました。これにより、イオン液体をゲル内により多く保持し、センサーへの応用が容易になることが期待できます。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は、疎水性イオン液体を用いたCOR-IGの調製と、作製したCOR-IGの吸着量の測定、および結合定数の算出によるCORに対する親和性の評価を予定していました。ところが、疎水性イオン液体を用いたCOR-IGの調製において、ゲルの相分離や、作製したゲル中に物質の溶出が確認されたり、作製したゲルが柔らかすぎて割れるため吸着量の測定が不可能など、疎水性イオン液体を用いたCOR-IGの作製にはあらゆる工夫が必要であり、均一で取り扱い容易なCOR-IGの確立に予想以上の時間を要しました。そのため、あらゆる疎水性イオン液体を用いてCOR-IGを作製し、吸着量の測定は行いましたが、COR-IGの結合定数の算出や、CORを混合せずに作製したノンインプリントイオン液体ゲル(NIG)の結合定数との比較は未だおこなえていません。従って、“やや遅れている”と判断しました。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は最終年度であり、これまでの2年間で確立したCOR-IGをリアルタイムモニタリングが可能なセンサーとして利用するための応用研究をおこないます。まず、2019年に完了することができなかった疎水性イオン液体を用いたCOR-IGのCORの特異性および親和性の評価をおこないます。COR-IGに対するCORやその他構造類似物質の結合量を紫外可視吸光光度法により求め、得られたスキャッチャードプロットから結合定数を算出します。現在作製しているCOR-IGは、電位差測定を行うためにクリップで挟むにはやや脆いため、ゲルの強度向上のため架橋性モノマーの量等を変更したCOR-IGにおいても検討をおこない、特異性と取り扱いやすさのバランスの取れたCOR-IGとします。 次に、確立したCOR-IGに対するCORの認識を電位差測定法により測定することで、ゲルセンサーへの応用を試みます。電位差測定法を用いてゲルセンサーの特異性能、定量性能および選択性能の評価をおこないます。測定は、銀/塩化銀電極を参照電極として用い、物質を添加した際の表面電位の変化を電位差計を用いて測定します。電位差測定法によるゲルセンサーの評価は、将来の生体内成分の分析に向けての基礎的検討として、蒸留水中や有機溶媒中だけでなく、緩衝液中においてもおこなうことで、無機イオンの影響も検討したいと考えています。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度研究経費の残高が855円となりました。新たに試薬等を購入するには残高が不足するため、次年度使用に繰り越し有効活用することとしました。 2020年度は、物品費として800,855円、旅費として50,000円、学会誌投稿料および英文校正料として50,000円の計900,855円の支出を計画しています。
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