本研究では、電気を通しやすいイオン液体(IL)を含有したゲルに、人工抗体とも呼ばれる分子インプリントポリマーを組み込んだ、分子鋳型ILゲルセンサーを開発するための基盤研究をおこないました。本センサーは、分子認識と信号変換部一体型のセンサーとなり、生体内微量成分の検出において、患者への負担がなく、リアルタイムかつ簡便な測定を可能にするセンサーとなることが期待できます。本研究では、コルチゾール(COR)を分析対象物質とするCOR鋳型ILゲルの確立を目指し検討をおこないました。 得られた研究成果は以下の通りです。まず、CORを特異的に認識するCORILゲル(COR-IG)を得るため、ゲルの作製条件の検討をおこないました。その結果、ILとして親水性のN-(2-Methoxyethyl)-N-methylpyrrolidinium tetrafluoroborateを用い、CORと機能性モノマーである4-ビニルフェニルボロン酸の比が1:5の条件で調製したCOR-IGは、CORに対して良好な結合量を示し、特異性を有することが示されました。次に、ゲルからのILの漏出を防ぐ目的で、疎水性ILを用いたCOR-IGの作製を試みました。その結果、作製時の溶媒であるジメチルスルホキシド(DMSO)の増加といった工夫を加えることで、無色透明で均一なゲルが得られました。最終年度には、疎水性ILとしてN-Buthyl-N-methylpyrrolidinium bis(trifluoromethanesulfonyl)imideを用いたCOR-IGにおけるCORの結合量を測定した結果、親水性ILを用いたCOR-IGと比較して1/3程度となりました。これは、増加したDMSOによりゲルの調製中にCORが漏出していることが原因と考えられ、ゲル調製の簡略化が必要であることが示唆されました。
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