研究目的 申請者はこれまでに細胞死により放出され、がん免疫を促進する内在性分子の研究を行い、抗がん剤であるトポテカンによる細胞死ががん細胞からの免疫賦活化DNAの放出を誘導することで、がん免疫を活性化させることを発見した。本研究ではトポテカンにより誘導される新規プログラム細胞死機構を解明するとともに、その細胞死シグナルの活性化ががん免疫の誘導にも寄与するかを検証した。
研究結果 トポテカンの既知の標的タンパクであるTopoisomerase I (TOP1)欠損細胞においてもトポテカン誘導性細胞死とDAMPsの放出は誘導されたため、トポテカンはTOP1とは異なる標的タンパクを介してDAMPsの放出を促進することが示唆された。そこでトポテカン結合ビーズを作成して細胞抽出液と混合し、トポテカン結合タンパクを質量分析により解析した結果、リボソームS60サブユニット構成タンパクであるRPLXを新規トポテカン結合タンパクとして同定した。トポテカンに結合しないRPLX変異体の過剰発現はトポテカンによる細胞死を抑制したため、トポテカンはTOP1とRPLX依存的に細胞死を誘導することが明らかとなった。R2年度ではこれらの結果を踏まえてin vivoにおけるがん免疫の活性化を評価した。RPLXのノックダウンはがん細胞からのDAMPsの放出を促進することでがん免疫の活性化を促進し、担がんマウスモデルにおいて抗PD-1抗体による腫瘍抑制効果を増強した。そのため本研究の結果から、トポテカンは新規標的であるRPLX依存的にがん免疫の活性化と細胞死を誘導することが明らかとなった。
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