ペルオキシソーム膜上に局在するABCタンパク質ABCD1によるペルオキシソーム内への極長鎖脂肪酸CoAの輸送機構について解析を行い、以下に示す結果を得た。 ・ABCD1のacyl-CoA thioesterase (ACOT) 活性について以下のような特性を明らかにした。1)ABCD1のACOT活性の活性中心は、N末端側の6個の膜貫通ヘリックスを含む領域に存在し、システイン残基が重要である。2)ABCD1のACOT活性がATPase活性には依存しない。3)ABCD1のACOT活性の基質認識に、基質のCoA部位のリボースの3’リン酸基や炭素鎖の鎖長が重要である。 ・ABCD1の基質輸送について以下の点を明らかにした。1)ABCD1は、ABCD1自身のACOT活性によってNBD-C16-CoAを加水分解し、生じたNBD-C16を輸送基質とする。2)ABCD1の基質輸送活性がATPおよびATPase活性に依存する。3)ABCD1の基質輸送にはACOT活性が必須である。 ・ペルオキシソーム内へのCoA輸送と極長鎖脂肪酸の再CoA化機構について解析した。CoA輸送体と推定されるPmp47遺伝子およびアシルCoA合成酵素と推定されるFaa2遺伝の破壊株をそれぞれ作製し、ABCD1を導入後、細胞分画を行い、得られたペルオキシソーム画分を用いて輸送実験を行った。その結果、ABCD1によるNBD-C16-CoAの加水分解で生じたCoAはペルオキシソームの外側に放出され、Pmp47pによってペルオキシソーム内に輸送されていることが示唆された。Faa2破壊株から取得したペルオキシソーム画分では、NBD-C16-CoA量の低下は見られなかったが、NBD-C16の取り込み量が減少したことから、Faa2pがペルオキシソーム内でNBD-C16のレセプターとして機能していることが示唆された。
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