研究実績の概要 |
大規模な耐性菌パンデミックの回避に向け、耐性化に大きく寄与している細菌の薬剤排出ポンプとその発現制御因子に着目した分子標的創薬を実現する。具体的には、排出ポンプが薬剤耐性だけでなく病原性発現等にも関わることが分かってきており、排出ポンプの機能の全貌を解明することが重要な課題となってきたため、排出ポンプの発現制御ネットワークおよび生理的役割を明らかにする。一方、研究代表者の研究から、排出ポンプの薬剤認識機構(Nature, 2011)および阻害剤感受性決定因子(Nature,2013)が明らかとなったが、依然として臨床的に有効な阻害剤は得られていないため、これまでに得られたタンパク質構造情報を利用した効率的な探索手法によって、排出ポンプ新規阻害剤を開発する。
緑膿菌ではMexBやMexYといった排出ポンプが多剤耐性化に寄与しており、これらのポンプの機能を阻害する物質も、いくつか見つかっている。ピリドピリミジン誘導体ABI-PPは、MexBは阻害するが、MexYは阻害できない。研究代表者は2013年に、緑膿菌MexYポンプの阻害剤結合に関して重要なアミノ酸を1つ同定したが(Nature,2013)、緑膿菌MexBポンプの重要アミノ酸は不明のままであった。
今年度は、MexBとABI-PPの結合様式を明らかにするため、阻害剤結合部位近傍でABI-PPとの結合に大きく影響すると予想されるアミノ酸を選び出し、これらを変異させた菌を作製し、阻害剤が効くかを調べた。その結果、抗菌薬エリスロマイシン存在下で、該当するアミノ酸のTrp変異体は、ABI-PPが効かないことを明らかにし、阻害剤の効き目に影響を与えるアミノ酸変異を新たに4つ同定した。これは2013年のNature誌における重要アミノ酸報告数を上回っており、耐性菌検出法および新規阻害剤開発に大きく貢献できると考えている。
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