研究課題/領域番号 |
18K14904
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
稲住 知明 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 助教 (80746503)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | プロスタグランジン / 受容体 / 脂質代謝 / Browning / 熱産生 |
研究実績の概要 |
プロスタグランジン(PG)は生体膜リン脂質からホスホリパーゼA2によって切り出されたアラキドン酸から、シクロオキシゲナーゼ を律速酵素として産生される代表的な生理活性脂質であり、発熱、疼痛、炎症を代表とする様々な生理作用を示す。申請者はこれまでPG受容体による新規の脂質代謝調節機構を解析しており、本研究では白色脂肪組織の褐色化(Browning)に注目し、PG受容体によるBrowning制御機構および、熱産生調節機構を明らかにすることを主目的としている。申請者は、一部のPG受容体欠損マウスにおいて、寒冷条件下での体温調節に異常が生じることを見出し、本受容体が熱産生調節に寄与していることを明らかにした。また、インビトロで脂肪細胞のBrowning誘導を評価するため、脂肪細胞の培養、誘導条件について基礎検討を行った。HPLC/MSシステムによる脂肪組織中各種PG類の一斉定量系を確立するため、サンプルの脂質抽出や精製手法、LCの移動相やカラム条件を最適化し、より短時間で高感度にPG類を検出することが可能となった。白色脂肪組織において、一部のPG受容体があるコラーゲン分子種の産生を特異的に制御することで、繊維化形成に寄与する可能性を見出した。次年度は熱産生が誘導される条件下で、どの組織から、どのPGが産生されるのかを調べるとともに、PG受容体による熱産生調節にBrowningが関与するのかを評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
熱産生に寄与するPG受容体を見出しことに加え、PG一斉定量系など、PGによる熱産生調節機構の評価系を確立するための条件検討が進んだため、現在までの達成度は「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、寒冷条件下や、β3アドレナリン受容体刺激などで熱産生を誘導させた時に、白色脂肪や褐色脂肪においてどのようなタイムコースでどの種のPGが産生誘導されるのかを調べるとともに、そのPGを処理した時に、実際にBrowning誘導が起こるのかをビボ、ビトロの両面から解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、インビトロでの条件検討実験を中心に行い、多くの試薬や消耗品を別テーマの実験と共有して使用することができたため。 次年度は、マウスを用いた熱産生誘導実験や、細胞特異的なPG受容体欠損マウスの作成など、インビボ実験を中心に行う予定であり、マウスの購入費や維持費に予算を使用する。
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