研究課題
プロスタグランジン(PG)は生体膜リン脂質からホスホリパーゼA2によって切り出されたアラキドン酸をもとに、シクロオキシゲナーゼを律速酵素として産生される代表的な生理活性脂質であり、発熱、疼痛、炎症を代表とする、様々な生理、病態作用を示す。申請者はこれまでにPGE2受容体EP4の欠損マウスにおいて、寒冷条件下での体温維持に異常が生じることを見出し、本受容体が熱産生調節に寄与することを明らかにした。本研究ではEP4受容体による熱産生調節機構を解明することを目的として、まず褐色脂肪組織(BAT)の機能、および白色脂肪組織(WAT)の褐色化 (Browning)に注目した。しかしながら、寒冷刺激下のEP4欠損マウスにおいて、BAT機能やBrowningのマーカーである脱共役タンパク質(UCP1)の発現は野生型と大きな差が見られず、本受容体はこれらの機能を直接制御しないものと考えられた。一方、本受容体欠損マウスではWATの脂肪分解が抑制されており、熱産生の基質として用いられる遊離脂肪酸の血中レベルが野生型に比べて低かったことから、これが本マウスの熱産生異常の一因であると考えられた。今年度はEP4受容体による脂肪分解促進機構を解析し、本受容体がインスリンシグナルに拮抗して、脂肪分解リパーゼの発現や活性を亢進させることを明らかにした。また、ヒトにおいてEP4受容体の低発現SNPを同定し、本SNP保有者でもEP4欠損マウスと同様、血中遊離脂肪酸レベルが低下していたことから、ヒトにおいてもEP4受容体が脂肪分解の促進に寄与している可能性が明らかとなった。
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