アルツハイマー型認知症などの認知機能障害は未だ発症機序に不明な点が多く、その治療も対症療法を中心としている。我々は、ケトン体代謝酵素であるアセトアセチルCoA合成酵素 (AACS) の脳・神経系における役割を検討した。脳組織において神経の発生・発達に関わる遺伝子がAACSにより調節されることを見出し、糖・脂質代謝異常の状態においては、AACSがミトコンドリアの代謝や神経の形態形成に関わる因子を調節する可能性を示した。以上の結果は、脳・神経系の機能におけるケトン体代謝の新たな役割を明らかにし、認知機能障害などの神経変性疾患に対する新たな治療法や予防法に関して、有益な基礎的知見となり得る。
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