研究課題
本研究では、好中球細胞外トラップ(NETosis)の誘導機構を明らかにするために、DNAメチル化制御の観点から検討した。研究代表者は、DNAメチル化転移酵素(DNMT)の阻害剤である5-azacytidine(Aza)を用いて、HL-60細胞(骨髄性白血病細胞)を分化させた好中球様細胞でのNETosis誘導変化について検討した。前年度までにアルギニンをシトルリンに変換する酵素であるpeptidylarginine deiminase 4(PAD4)の発現を亢進させ、NETosis誘導を亢進させていること、ELISAによって細胞外DNAのほとんどがメチル化されていないDNAだったこと、好中球分化にはDNMTだけでなくten-eleven translocation 1 (TET1) が関与していることを明らかにした。今回、AzaによるPAD4の発現亢進がNETosis誘導に関与するかどうか詳細に明らかにするために、PAD4の活性を阻害するCl-amidineを投与し、NETosisの誘導を確認したところ、NETosisが抑制される傾向にあることがわかった。このときヒストンのシトルリン化も抑制されたことから、PAD4の発現とシトルリン化の亢進がNETosis誘導に関与することがわかった。また、活性酸素誘導に関与するNADPH oxidase (NOX) の阻害剤であるDPIを投与したところ、Aza誘導性のNETosisに影響がなかったが、ミトコンドリア誘導性の活性酸素を消去することでAza誘導性NETosisが抑制された。これらの結果から、好中球分化過程におけるDNAメチル化状態の変化は、PAD4の発現とミトコンドリア由来活性酸素の誘導に影響を与え、NETosis誘導を制御することが示唆された。
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