研究課題/領域番号 |
18K14910
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
渡部 匡史 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (60634326)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス / ヘルペスウイルス / 遺伝子発現制御機構 / ウイルス性開始前複合体 |
研究実績の概要 |
現在まで,ウイルス後期遺伝子発現を司っているウイルス性開始前複合体の構成因子の一つであるORF66の機能性領域の同定に取り組んできた.具体的には,他のウイルス性開始前複合体構成因子であるORF34と会合する領域の絞り込み,重要アミノ酸の同定を進めてきた. 約60アミノ酸ごとを欠損させたORF66欠失変異体発現プラスミドを7種構築しPull-down法により評価したところ,ORF66のC末端領域が重要であることが示唆された.一方で,これらの欠失変異体を,Complimentation assay(欠損ウイルス産生細胞株への発現プラスミド導入によるウイルス産生量復帰試験)に供したところ,産生量の回復は認められなかった.このことは,ORF66が様々な領域をもちいて複合体中で機能していることが示唆された. ORF66のC末端領域中で,ヘルペスウイルスホモログタンパク質間で完全保存されているアミノ酸残基について,2-4残基程度のブロックごとにアラニン置換した変異体を9種構築し,同様に評価したところ,計5種のORF66アラニン置換変異体で結合能を喪失した.興味深いことに,これら計5種の置換体のうち3種について,C-X-X-Cモチーフが存在していた.このモチーフは,DNAやタンパク質などとの結合に関わるZinc-fingerドメインに存在することが知られている.さらに,1残基ごとのアラニン置換変異体解析により,それぞれのシステインが重要あることを確認している.以上のことから,ORF66は亜鉛を分子内に補足して機能構造を形成している可能性が示された. また,ブロックアラニン置換体について,Complimentation assayで評価したところ,ORF34との結合能を喪失した変異体ではいずれも回復が観察されなかった.一方で,結合する変異体の一部でも回復しなかったことから,ORF66のC末端領域には,ORF34だけではなく他の因子も会合し機能することが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本申請研究では,その他計画している課題として「“ハイブリッド複合体”であるvPICの全体像の解明」および「転写開始領域配列(TATTモチーフ)置換ウイルスによるvPICの生理的意義の解明」があり,これらにも取り組むことを予定していた.しかしながら,要の研究材料となる,タグが付加されたウイルス性開始前複合体構成因子をコードする改変ウイルス,ならびに後期遺伝子プロモータ領域中のTATT-boxをTATA-boxに置換した改変ウイルスの作出が,現時点で難航している.そのため,ウイルス性開始前複合体構成因子に対する抗体を作製するなどの代替案について現在検討をすすめている.
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今後の研究の推進方策 |
前述のとおり,ORF66の機能的ドメインや構造に関する解析は順調にしており,現在原著論文として投稿準備中である.一方で,宿主因子を含めた複合体全体の構成因子の同定に関しては,進行が遅れている.そのため,付加するタグの変更や,ウイルス性開始前複合体構成因子の過剰発現系,さらには抗ウイルス因子抗体の使用などの代替案とも並行させて,研究展開する予定である.TATT-box置換改変ウイルスのBACクローン作出に関しては,改変標的とするTATT-boxを複数選択するなどして対応していきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費やその他費用に関して,経費額が予定額より下回った.旅費に関しては,参加した国際学会の旅費について,申請者の所属施設より支援を受けたためである.残額については少額であるため,次年度以降の物品費(試薬購入)などに充当する.
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